その“電撃的訪問”は、急転直下で決まったのか、はたまた周到に練られたシナリオなのか――。
安倍晋三首相は5日、今月26~27日に米ハワイを訪問し、第2次世界大戦で日米間の開戦(1941年12月8日)が起こったホノルル市・真珠湾をオバマ米大統領とともに犠牲者慰霊のため訪問すると発表した。日本の現職首相が真珠湾を訪れるのは初めてとなる。
先の日米開戦から75周年を迎える今年、5月にはオバマ氏は現職の米大統領として初めて、大戦中に米国が原子爆弾を投下した広島市を訪問していた。安倍首相は5日の会見で、訪問の目的について、「犠牲者の慰霊のため」「日米の和解の価値を発信する機会にもしたい」としている。
“お詫び行脚”
今月12月といえば、15日にロシアのプーチン大統領との首脳会談が予定されており、さらに年明け1月にかけて衆議院解散の可能性も取り沙汰されるなど重要な政治日程がつまるなか、なぜ突如として真珠湾訪問が決定されたのであろうか。以前から日米政府間では水面下で調整が続いていたとも報じられており、5日の会見で安倍首相は、11月のアジア太平洋協力会議(APEC)首脳会議(ペルー)でオバマ氏と立ち話をした際に決まったとも語っているが、なぜ“今のタイミング”なのであろうか。
ジャーナリストの朝霞唯夫氏は、こう解説する。
「今回の真珠湾訪問は、永田町では安倍首相の“お詫び行脚”と言われています。というのも、11月8日(日本時間9日)に米大統領選で共和党のドナルド・トランプ候補が勝利し、次期大統領となった。それまで安倍首相は、民主党のヒラリー・クリントン候補が勝つと信じて疑わなかったため、慌ててトランプ氏に電話で祝辞を述べ、すぐさま会談の申し出をし、日本時間の同18日朝、ニューヨークのトランプ・タワーでの会談となりました。しかし、これがホワイトハウスの逆鱗に触れたといわれています。
12月のロシアのプーチン大統領との首脳会談も思惑通りにいきそうにないところに、アメリカからもソッポを向かれれば日本の立場はない。そこでホワイトハウス、つまりオバマ氏に“お詫びに行く”という話を慌てて持ちかけた、という話が自民党内で囁かれています。