経営危機だった日立と東芝、明暗の分かれ道…日立は再建で過去最高益、東芝は存亡の危機
日本企業のコーポレートガバナンスが問われている。グローバル競争が熾烈化するなかで、海外資本を呼び込むためには、経営の透明性の確保と同時に、稼ぐ力をつけ、競争に打ち勝つ“攻め”のガバナンス強化が求められている。
安倍内閣は、2014年6月に閣議決定した「日本再興戦略」改訂版(新成長戦略)のなかに「コーポレートガバナンスの強化」を掲げた。これを受けて、15年6月、東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード」を導入した。
東証は、13年に大阪証券取引所と経営統合して日本取引所グループとなったが、日本取引所グループ発足当時から15年までCEO(最高経営責任者)を務めたのが、斉藤惇氏である。現在、コールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)・ジャパン会長を務める。
長年、日本だけでなく世界の金融市場の最前線を走ってきた斉藤氏は今、日本企業をどう見ているのだろうか。
プロ経営者
片山修(以下、片山) 金融市場のグローバル化が加速するなかで、日本企業は従来の「守り」のガバナンスから、「攻め」のガバナンスへの移行が求められています。ところが、東芝の不正会計、三菱自動車工業の燃費不正など、日本の屋台骨を支える製造業、それも電機や自動車という基幹産業において重大な不祥事が発生し、健全なガバナンスが機能しているとはいえません。いったい、なぜこういうことが今の日本で起きているのでしょうか。
斉藤惇氏(以下、斉藤) 原因のひとつは、サラリーマンが経営者になる会社の仕組みにあると思います。大きな会社になればなるほど、大学を出たエリートが終身雇用に近い契約で入社して、出世して社長になる。入ったときには単なる社員だった人が、いつの間にか経営者。これは、“マジック”ですよ。
片山 “マジック”ですか。
斉藤 ええ。経営者と社員は本来、求められる能力が違います。僕は、経営者には経営者のプロ市場があっていいと思っています。プロの経営者がいろいろな企業へいって経営をするということが、当たり前になっていい。
プロの経営者となる人は、会計知識や財務分析能力など“武器”となるスキルを備え、人や組織をまとめたり動かすことに長けた人です。そうした人材が、5年、10年、あるいは20年という契約で企業のトップに就き、経営を手がける。これが、アメリカの場合は成功していますからね。