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日ハム、巨額使用料吸い取る札幌ドームと決別…売店収入や球場の広告料も日ハムに入らず

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

稼働・集客に貢献しても「使用料値上げ」

 札幌ドームでの公式戦で、球団が球場側に支払う使用料の基本は、かつては1試合につき800万円(入場者2万人以下の場合)。2万人を超えると、入場者1人につき400円ずつ追加で支払っていた。それが16年4月から値上げされた。観客が入れば入るほど球場の使用料が増えるのは、一見当たり前に思えるが、実はそうではない。

 かねてから、球団幹部は札幌ドームの使用料に関してこんな不満を示していた。

「ファイターズは、札幌ドームの稼働率や収益に貢献していると自負していますが、どんなに多く試合を開催しても、観客動員数を増やしても使用料の基準は変わらない。一般の取引でいえば、集客力のあるイベントを数多く実施した企業にはスケールメリットが働き、料金割引も受けられると思いますが、条件交渉をしても不調に終わりました」

 それに加えて、コンサートなどドームで開催されるイベントのために、一部の客席や、球場内のトレーニング器具などを撤去・再設置する場合の費用も球団負担だ。それも上記「関連費用」に含まれる。

 球団は、約27億円といわれる親会社・日本ハムからの広告料があって黒字経営が成り立っているが、広告料を除いた真の黒字経営をしたい球団にとっては、球場問題が重しとなっていたのだ。

 札幌市側の歴史的経緯や事情も紹介しよう。札幌ドームは02年のFIFAワールドカップ(W杯)日韓大会の試合会場となることも見越して設計された多目的スタジアムだ。建設当時の同市の幹部・関係者は、W杯後の健全運営を見越して、試合数が多いプロ野球の全球団を回り、札幌ドームで試合開催を打診した経緯があるが、その本音はプロ野球球団の誘致だった。

 そうした紆余曲折の末、条件に合致したのが、当時の球団本拠地である東京ドームからの移転も考えていたファイターズだった。つまり、北海道日本ハムファイターズ誕生時は、札幌市も球団も、お互い「困っているのを助けた」との思いがあったのだ。

 だが、それから十数年でビジネス環境も変化した。現在のキーワードのひとつは、「対立」ではなく「協調」だ。プロ野球の球場はリゾート施設などと同じで、お客さんにその場所に来てもらうことで成立するビジネスだ。冒頭に記した「協働」にはさまざまな意味がある。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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