新日鉄住金の多角化事業の象徴が解体される。2016年12月16日、福岡県北九州市のテーマパーク「スペースワールド」は17年12月末に閉園すると発表した。同園は新日本製鉄(現・新日鉄住金)八幡製鉄所の遊休地に1990年4月に開業したテーマパークだが、営業開始から四半世紀超で幕を閉じる。アトラクション施設は閉園後に取り壊す。
スペースワールドは16年11月、5000匹の魚を氷漬けにしたスケートリンクを製作し、過激な広告も相まって、インターネット上を中心に「かわいそう」「命を冒涜している」などと猛批判にさらされ、営業の一時中止に追い込まれたことで全国的に注目を浴びた。
スペースワールドの運営会社は閉園について、「経営難が理由ではない」と説明した。16年12年17日付西日本新聞は、「土地を所有する新日鉄住金と、園内にあるアトラクションのなどを所有する同園側が、土地の賃貸をめぐる条件交渉で折り合いが付かなかったことが一因」と報じた。
16年8月に閉園を決定。従業員計100人の雇用は、同園を運営する加森観光グループ企業への転職などによってすべて守るとしている。
新日鉄住金八幡製鉄所の広報担当者は、「北九州市と協議しながら新たな賃貸先を探していきたい」とコメントした。新日鉄住金は、多角化事業のシンボルだったテーマパークから撤退する。
スペースワールドは新日鉄住金の目玉事業
「鉄は国家なり」と豪語していた日本の鉄鋼業は、85年に鉄鋼不況に突入した。これ以降、長きにわたって出口が見えない冬の時代を迎える。日本の製鉄業の盟主である新日鉄住金は成長分野に活路を求め、エレクトロニクス、情報通信、都市開発、生活関連事業などの新規分野に進出した。
87年にライフサービス事業部を新設。その目玉がスペースワールドだった。当時の斉藤裕社長が積極的に推進し、同園は“斉藤プロジェクト”と呼ばれた。
88年7月に資本金20億円で株式会社スペースワールドを設立し、90年4月に新日鉄八幡製鉄所の遊休地に開業した。総面積は24万平方メートルにわたり、宇宙をテーマにしたテーマパークでスペースシャトル「ディスカバリー号」の実物大モデルを設置した。