総事業費は380億円で、年間入場者数200万人を想定した。入場者数は97年に216万人を記録したが、その後は次第に集客が低迷。14年3月期に累積赤字は331億円に膨れ上がった。
新日鉄住金は子会社で運営することを断念し、05年5月にスペースワールドの民事再生法を申請した。負債総額は350億円で、資本金20億円は100%減資し、新日鉄住金が負債など損失をすべてかぶった。
そして05年7月、営業権をリゾート運営会社の加森観光に譲渡。スペースワールドの新しい資本金は1000万円で、加森観光の完全子会社として再出発した。
「リゾート再建王」の手腕
加森観光は、加森勝雄氏が53年に設立した加森産業が前身である。貸ビル業から観光業に事業を拡大し、登別温泉ケーブル、のぼりべつクマ牧場を開業。81年にルスツリゾート経営のため、登別温泉ケーブルの全額出資により加森観光を設立した。
92年、学習院大学経済学部卒の加森公人氏が父の後を継いで加森観光の社長に就いた。小さなクマ牧場を足がかりに「リゾート再建王」へと駆け上がっていった。90年代後半から、経営に行き詰まったリゾートの買収や運営委託を積極的に進めた。
仙台の不動産会社、関兵精麦が開発を進めた北海道占冠村のアルファリゾート・トマム、セゾングループ傘下の西洋環境開発がフランスの地中海クラブと提携して開発した北海道新得町のサホロリゾート、リクルート創業者の江副浩正氏が心血を注いだ岩手県の安比高原スキー場と盛岡グランドホテルを経営する岩手ホテルリゾートなどを傘下に収めた。
買収にはカネをかけず、それぞれの施設で働いていた従業員も解雇しない。それなのに、公人氏が手に入れると、なぜかそのリゾートは再生する。多くの破綻した観光地を再生させたとして公人氏は、国土交通省から観光カリスマに選ばれた。
だが、加森観光グループの全体像は謎に包まれている。非上場のため、売り上げや利益などの財務内容は公開していない。ホームページによると、資本金は8億1866万円。ルスツリゾートを中心に28のスキー場、ゴルフ場、遊園地、ホテルなどを運営している。
閉園の真相は……
そんな加森観光が、新日鉄住金からスペースワールドの運営を受託した。08年には、年間フリーパスの大幅値下げやプールなどの新規施設の開業により来場者は11年ぶりに増加に転じ、12年には164万人に達した。だが、その後なぜか入場者数の公表を止めた。