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宇多川久美子「薬剤師が教える薬のリスク」

なぜ多くの医師は、自身ががんになると抗がん剤を使わないのか

文=宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士
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なぜ多くの医師は、自身ががんになると抗がん剤を使わないのかの画像1「Thinkstock」より

 世界で初めて開発された抗がん剤は、マスタードガスから生まれました。第一次世界大戦で使用された毒ガス、マスタードガス(イペリットとも呼ばれる)に、細胞分裂を抑える機能があることがわかりました。第二次世界大戦中には研究が進み、マスタードガスの誘導体のナイトロジェンマスタードが初めて抗がん剤として使われました。

 ナイトロジェンマスタードを改良したシクロフォスファミド(商品名:エンドキサン)は、がん細胞に対する殺傷力も高い半面、正常な細胞に与えるダメージも大きく、抗がん剤のなかでも副作用の強い薬として知られています。それにもかかわらず、現在でも代表的な抗がん剤として多くのがん患者に使われています。

 人を殺傷するために使われたものをがん治療に使用するとは、なんとも皮肉な話です。

 2015年11月、世界保健機関(WHO)は「がんの原因となる116種類の要因」を公式に発表しました。そこには、「喫煙」「紫外線」「エックス線・ガンマ線」「アスベスト」「加工肉」などが列挙されていますが、なんとシクロフォスファミドをはじめとした多くの「抗がん剤」も含まれていたのです。

 抗がん剤は、がん細胞を小さくするかもしれませんが、人体には確実に有害です。がんは「不治の病」「苦しい病気」というイメージが強いですが、抗がん剤を使うことによって、その苦しみはさらに大きいものになり得るのです。

 確かに、抗がん剤によって一命をとりとめたケースもあります。医師からは、「抗がん剤を使わなければ余命は3カ月だが、使えば1年」などと説明を受けるケースも見られます。

 しかし、抗がん剤によってがんを小さくすることだけを見ていては、本当の意味でのがんの治療にはならないのではないでしょうか。「木を見て森を見ず」という言葉に当てはめれば、がんが「木」なら身体は「森」です。森全体にも目を配る、総合的な治療が望まれます。

進行したがん、再発したがんについての治療の進歩

 現在では、ステージ1のがんに関しては約90%、ステージ2でも70~80%ほどは治るといわれています。しかし、がんが進行したステージ3になると「5年生存率」は50%になり、ステージ4になると10~20%へとがくんと落ちてしまいます。ちなみに、抗がん剤治療は一般的に、進行したがんに対して行われることがほとんどです。

 ある医師からこんな話を聞きました。

「一般の人ががんになった場合よりも、いざ医師ががんになった場合のほうが、抗がん剤治療ではなく代替療法に頼る比率が高いというデータがある。これは自分の周りでもそうだと思うし、納得できることだ。なぜなら、多くの医師たちも、西洋医学だけでがんの治療が完結するとは本音ではさらさら思ってはいないからだ」

 進行したがんについて、治療の進歩が見られないのは、なぜなのか。現状の三大治療(標準治療)は最善なのか。このようなことを、医療従事者はもちろん、治療を受ける患者側もまた、あらためて考えてみるべきではないでしょうか。

抗がん剤が非常に有効ながんもある

 がんは身体のさまざまな場所にできますが、大きく固形のがんと血液のがんに分けられます。

 固形のがんは、臓器の表皮や上皮、筋肉や骨にできるがんで、肺がん、胃がん、乳がん、大腸がんや骨肉腫などがあります。

 血液のがんは、白血球・赤血球・血小板など血液をつくる組織の異常によって起こるがんで、悪性リンパ腫や白血病などがあります。

 身体の特定の部位にとどまる固形がんに対し、身体中を巡る血液に関係して生じるがん。こうしたがんの形状の違いは、抗がん剤の効き目にも大いに影響します。抗がん剤は、血液に乗って身体中を巡るため、血液のがんであれば、抗がん剤は直接作用し、その効果を発揮できるのです。そのため白血病や悪性リンパ腫などは、今や「抗がん剤によって治るがん」といわれているほどです。

 最近は、薬の弊害を知り、「抗がん剤は絶対に使いたくない」という方も少なからずいらっしゃるようです。抗がん剤のことを十分に調べたうえで、ご自身が納得し決断されたことならよいのですが、もしも白血病や悪性リンパ腫などの抗がん剤が有効ながんにもかかわらず、聞きかじった情報だけで抗がん剤を拒んでいるとしたら、なんとももったいない話です。

 筆者は、「薬を使わない薬剤師」と自称していますが、主作用が副作用を大きく上回り、効果が十分期待できるケースであれば、抗がん剤の使用を検討します。

 よく誤解されるのですが、私は「何がなんでも絶対に薬は使わない」といっているわけではありません。「薬は良い作用ばかり期待して使うべきではない。どんな副作用があるかをきちんと知ったうえで適切に使うもの」とお伝えしているのです。

 したがって、自分や家族が万一がんになった場合は、その時点でできうる限りの情報を集め、どんな治療が効果的なのかをじっくり考え、抗がん剤による治療がもっとも有効と判断した場合は、それを使う選択をします。

 しかし、何度もくり返しますが、がんも生活習慣病です。治療によってがん細胞が消えても、がんをつくる原因まで消えたわけではありません。そこから先の生活習慣を見直し、あらためることが何より大切なのではないでしょうか。

―『薬剤師は抗がん剤を使わない』より抜粋―

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

宇多川久美子/薬剤師・栄養学博士

薬剤師として20年間医療の現場に身を置く中で、薬漬けの治療法に疑問を感じ、「薬を使わない薬剤師」を目指す。現在は、自らの経験と栄養学・運動生理学などの豊富な知識を生かし、感じて食べる「感食」、楽しく歩く「ハッピーウォーク」を中心に、薬に頼らない健康法を多くの人々に伝えている。『薬剤師は薬を飲まない』(廣済堂出版)、『薬が病気をつくる』(あさ出版)、『日本人はなぜ、「薬」を飲み過ぎるのか?』(ベストセラーズ)、『薬剤師は抗がん剤を使わない』(廣済堂出版)など著書多数。最新刊は3月23日出版の『それでも「コレステロール薬」を飲みますか?』(河出書房新社)。

『薬剤師は抗がん剤を使わない』 日本人の2人に1人はがんになるという時代において、抗がん剤は果たして有効なのか amazon_associate_logo.jpg

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