森友・加計学園問題を受けて自民党は先の東京都議選で惨敗するなど、支持率が低下するなかで内閣改造を行った。問われたのは、安倍晋三首相による縁故者への便宜供与問題であり、国会での追及に対しても安倍首相の強権的対応が目立ち、「丁寧に説明していく」という建前にもかかわらず、改造内閣は驚くべき布陣となった。
森友問題の核心点である、国有地を8億円値引きし、国家財政を損失させた背任行為が明るみとなったが(後述参照)、その責任者である麻生太郎財務相や石井啓一国交相は釈明をすることなく、そのまま留任した。内閣改造の3日前に森友学園の前理事長・副理事長である籠池泰典・諄子夫妻が逮捕され(21日には再逮捕)、政府は問題の幕引きを狙っていることがますます明らかになった。
その森友問題をめぐり、大手メディアの報道でも変化が見え始めた。8月3日放送の『報道ステーション』(テレビ朝日系)では、財務省近畿財務局との交渉に向けて森友と施工会社、弁護士、設計会社が行った打ち合わせ(2016年3月30日)のメモが見つかったとし、これまで財務省が「森友側と売買価格について事前交渉してきたことはない」との発言を行ってきたことに反して、売却価格ありきで値下げの交渉を行ってきたと報じた。また、値下げのために「9メートルの深さまで何か出てくるという報告をするよう、財務局から森友側に言われている」という内容も明かされた。
またFNNは、2016年5月中旬から下旬に籠池氏側と近畿財務局担当者で交わされたやりとりの音声データを入手したとし、国有地売買の交渉を続けてきた近畿財務局の池田靖前国有財産統括官とみられる人物が「われわれの見込んでいる金額よりも、(撤去費が)少なくても、われわれは何も言わない」と話していたと報じた。
週刊誌「AERA」(朝日新聞出版/8月7日発売)も「籠池夫婦を逮捕 事件本丸は地検の身内“財務省”」と報じ、安倍首相を忖度し「行政を歪めてきた」財務省の実態を明らかにした。
安倍政権は森友問題をめぐり真相隠しのために盾となった財務省の佐川宣寿前理財局長を国税庁長官に栄転させ、その一方で一切の責任を逮捕された籠池氏に押し付けた。