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金を貸さなくなった銀行が人員削減競争突入

文=編集部
金を貸さなくなった銀行が人員削減競争突入の画像1「Thinkstock」より

 3メガバンクは大リストラ時代を迎えた。人工知能(AI)やロボットを活用することで3万2000人分の業務量を減らす。

 三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は、今後3年で国内の従業員約3万人の3割にあたる9500人分の業務を削減。三菱東京UFJ銀行約480店舗のうち2割程度を統廃合する。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)は、今後10年で従業員6万人の3割にあたる1万9000人の業務を減らす。全国約800店の機能を見直し、20~30店を統廃合する。

 三井住友フィナンシャルグループ(FG)も、今後3年で三井住友銀行の4000人分の業務量を減らす。

 日本銀行によるマイナス金利政策の長期化で利ザヤが縮小、融資業務で稼ぐことが難しくなったことが要因だ。デジタル技術の活用による効率化を徹底し、“儲ける銀行”に転換する。

 背中を押したのは金融庁だ。金融庁は金融機関の監督・検査体制を大幅に見直す。2018年夏に検査局を廃止し、監督局に統合する。不良債権の扱いや管理体制の不備を細かくチェックする従来の手法を転換。金融機関に創意工夫を促し、人口減少や低金利環境下でも持続的に収益を上げることができる経営モデルづくりを後押しする。

 金融庁は1998年に旧大蔵省から分離して発足した(当時は金融監督庁)。その頃は、北海道拓殖銀行や日本長期信用銀行(現新生銀行)、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)の経営が破綻し、不良債権が日本の金融システムを揺るがしていた。

 そこで不良債権処理が金融庁の最重要テーマとなり、検査局は金融機関に不良債権処理を厳しく迫り再編を主導した。

 2000年、富士銀行、第一勧業銀行、日本興業銀行の3行が統合してみずほホールディングス(現みずほフィナンシャルグループ)が誕生したのを皮切りに、01年から05年にかけ都市銀行の合併が相次ぎ、三菱UFJFG、みずほFG、三井住友FGのメガバンク3行体制に移行した。銀行の数は拓銀破綻前の140から116に集約された。

 この間、不良債権比率は大幅に減った。拓銀が破綻した98年3月期には、全国の銀行の不良債権残高は約30兆円、貸出資産に占める割合は5%強に達していた。さらに、ピーク時の02年3月期は43兆円にまで不良債権は膨れあがった。

 それに比べ17年3月期の不良債権は約7兆7000億円だ。ピーク時の5分の1、20年前の4分の1に減り、主要行の不良債権比率は1%未満にまで下がった。

金融庁の強権が生んだ副作用

 その一方、金融庁が検査で強権を振るった副作用は大きい。

 預貸率(銀行の預金に対する貸出金の比率)は低下を続けた。拓銀破綻時には86%だった預貸率は17年3月期に53%まで下がった。貸し出しを増やすと不良債権が必然的に増える。そこで、安全な国債などの売買で利益を上げようとしたのだ。

 貸さなければ、銀行の稼ぐ力はどんどん衰えていく。銀行経営者は金融庁の意向を忖度して、不良債権となるような貸し付けをできる限り排除した。その結果、不良債権比率は低下したが、預貸率も急速に落ちた。

 その結果、融資を受けられない中小企業が続出し、地方経済の衰退に拍車がかかった。「金融庁の強権が地方経済の首を絞めた」と、痛烈に批判する経済人は少なくない。銀行自体も、融資して稼がなければ、やせ細っていくだけだ。

 3メガグループが打ち出した大リストラは過剰人員、過剰店舗を整理、業務のIT化によって収益力を高めることを狙ったものだ。

 金融庁が「箸の上げ下ろしにまで口を出す」ことに慣れて、箸の使い方を自ら考えない銀行経営者は少なくないとの辛口の指摘もある。果たして、銀行は金融庁の傘の下から離れて自立できるだろうか。
(文=編集部)

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