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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

クレーンゲーム詐欺の急増は、世帯の深刻な貧困化&賃金低下の証しである

文=加谷珪一/経済評論家
クレーンゲーム詐欺の急増は、世帯の深刻な貧困化&賃金低下の証しであるの画像1「Thinkstock」より

 昨年末、クレーンゲーム機の設定を景品が取れないように変更し、客から料金を騙し取ったとして、運営会社の社長らが逮捕される事件があった。社会的には悪質な詐欺事件ということになるが、視点を変えると日本経済の厳しい現実が浮かび上がってくる。

ゲームセンターは実は風営法の管理下にある

 
 大阪府警は昨年12月23日、大阪と京都でゲームセンター運営会社の社長らを詐欺容疑で逮捕した。来店した客に「絶対取れる」などと話してゲーム機で遊ばせ、数十万円の料金を騙し取った疑いが持たれている。ゲーム機は設定が変更されており、絶対に景品が取れないような仕組みになっていたという。

 失敗を続ける客に「今やめるともったいない」などと話し、ゲームを続けさせた。客を信じさせるため、設定をこっそり変更した上で、店員が景品を取ってみせるというパフォーマンスまで行っていたとのことなので、かなり悪質だ。

 このゲームセンターは同様の手口で、繰り返し詐欺を行っていたらしく、大阪府警には景品が取れないという被害相談が連日のように寄せられていた。ある著名ユーチューバーはこうした事情を知った上で、あえて自腹で店舗に出向き、景品が取れずお金を巻き上げられてしまう様子を動画で報告していたという。そのくらい、この店舗は有名だったということらしい。

 もちろんこうした行為は許されるものではないが、よくある詐欺事件にも思える。だが経済という側面に視点を移すと、まったく別の光景が広がってくる。

 知らない人もいるかもしれないが、ゲームセンターというのは風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の規制を受ける業種であり、具体的には5号営業という遊技場に分類されている。風営法ではこうした遊技場について各種規制を定めており、ゲームの結果に応じて商品を提供することは原則として禁止されている。また風営法一般のルールとして、客引きやつきまといといった行為も御法度だ。

 ただ、どこまでを商品とするのかは微妙で、現実には警察の判断に任されている部分が大きいが、800円程度であれば商品に該当しないというのが一般的解釈となっている。このため、クレーンゲームの商品のほとんどは安価なぬいぐるみなどになっている。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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