ソニーの創業者、盛田昭夫氏の『学歴無用論』(朝日新聞社)がベストセラーとなったのは、今から50年あまり前の1966(昭和41)年だった。昭和から平成の終わりと時を移した現在、同じ趣旨のものを記すのならば「大学名無用論」と置き換えられるのではないか。無用論の頃の4年制大学進学率は1割そこそこであったが、現在は5割前後。希少であった“学士様”の価値は大きく下がった。
時折、企業の人事担当者などから、大学について意見を求められることがある。会話の中心になるのは、やはり大学の名前、ブランドである。新卒の就職活動は空前の売り手市場であることを映しているのか、ぼやき交じりに「旧帝とか早慶など有名大学の出身者を集めろと上(人事担当重役)がうるさい」と、企業サイドの本音を明かしてくれる方もいた。
各大学の入学試験の難易度を軸にした序列は、半ば固定化されていることもあって、志望者の取捨選択の基準にするにはわかりやすく、広く理解が得られやすい。特に事務処理能力が問われるホワイトカラーでは、限定された時間内に課題を解く学習の積み重ねと、その能力は「いわゆる仕事ができる、できないと、ある程度は関連している。採用の際にMARCHあたりで線引きをするのはうなづける」(上場企業管理職)という声も多い。
ただ時間軸を広げて調べてみると、序列の変化、各大学の浮沈が感じ取れる。
上場企業役員数の出身大学別ランキングは、実社会における各大学の人脈の厚み、存在感を示す指標になりやすい。2017年の役員数トップは、戦後はおろか明治の御代から経済界で覇権を握っていた慶應義塾大学であり、次いで東京大学、早稲田大学が不動のベスト3だ。以下、上位には京都大学、中央大学、明治大学、一橋大学、日本大学など、お馴染みの大学が続く。試みに10年前の07年のデータと対比してみたが、順位に若干の変動はあるものの、顔ぶれにほとんど変化はなかった。
役員数を増やしている大学
ただ全体をつぶさに見ると、興味深いこともわかった。ひとつは、ほとんどの大学が役員数を減らしていること、そして、その一方で数少ないながらも役員数を増やしている大学が存在することだ。