の文字が踊った。
だれもが驚いた「出資も検討」との発言
5月21日、場所は三菱電機の経営方針説明会会場。そこに居合わせたマスコミ陣を驚かせたのは、三菱の今後の事業戦略ではなく、同社が約25%の株を持つルネサスへの発言だった。「(出資の要請があれば)3社で検討していく」(山西健一郎社長)。これまで事業上の支援をしても、かたくなに「金は払わない」という姿勢を貫いてきた態度が一変した瞬間だった。
背景にあるのは、ルネサスの資金繰りの悪化だ。手元資金は12年3月末で前年同期の半分以下である1300億円程度にまで目減りしている。関係者によれば「1カ月程度の運転資金しかない」という。エルピーダのように公的資金の返済に苦しんでいるわけではないが、主力の家電向け半導体の不振などもあり、ジワジワと厳しさが増しているのは間違いない。
市場からの評価も厳しい。株価は5月21日の終値は269円。その数日前から年初来安値を更新し続けている。”親”3社への支援要請が伝わった22日に300円台まで持ち直したが、1カ月前の終値480円(4月20日)を考えると落ち込みぶりが際立つ。
リストラしようにも原資不足に、不安募る銀行団
気をもむのは銀行団だ。資金繰りを懸念し、抜本的な構造改革案の提示をルネサスに求めた。ルネサスは全従業員の12%に相当する5500人の人員削減案を軸とするリストラ案を銀行団に提出し、5月25日には、最大で1.4万人の人員を削減する方針を固めた。過剰と言われ続けた人員削減は予想通りだが、問題なのはリストラに必要な原資。退職金の割増などの資金が、手元に十分にないのは前述の通り明らかだ。
ルネサスが銀行団に提示した資金調達案は、大株主3社を約600億円の増資の引き受け手とするというもの。冒頭の山西社長の発言は、こうしたルネサスの計画を受けてのものだ。ルネサスの経理担当役員は三菱出身だけに、三菱とはすでに話がある程度詰まっている可能性は高い。ただ、「三菱は分社化しても面倒を見る社風。山西さんも救済する気持ちはあるのだろう。だが、日立が動かなければ、ルネサス救済は成立しないスキーム」(三菱社員)との声も聞かれる。
旧ルネサス偏重の、いかんともし難い状況
というのも、ルネサスは出資構成こそ各社3割前後で「3社の会社」という印象だが、実情は「日立の会社」そのものだからだ。10年4月に日立と三菱の半導体合弁会社「ルネサステクノロジ(以下、旧ルネサス)」とNECの半導体子会社「NECエレクトロニクス」が合併して、現在のルネサスエレクトロニクスが発足した。会社誕生時こそ、社長に日立出身で旧ルネサスの赤尾泰氏、会長にNEC出身の山口純史氏を据え2巨頭体制を敷いたが、1年で山口会長は顧問に退いた。会長は空席のままで、実権は赤尾社長に集中している。幹部クラスだけでなく、社内の人事を見れば日立優遇は明らか。NEC出身の社員は、「役職が同じでも、重要顧客は旧ルネサス、特に日立出身者が担当している」とこぼす。