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“冷や飯世代”団塊ジュニアの中で成功した人たちの共通点は「少年ジャンプ」?

構成=國貞文隆
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“冷や飯世代”団塊ジュニアの中で成功した人たちの共通点は「少年ジャンプ」?の画像1『団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』(講談社/岩崎大輔)
 団塊ジュニアである1971~74年生まれの世代が、続々と40代を迎えている。右肩上がりの時代を謳歌した親の世代と違って、この世代は下り坂の時代にあたり、冷や飯ばかりを食わされてきた。受験競争は激しく、バブルの恩恵も受けることなく、社会人になっても不況ばかり。人口動態として見れば、最後のボリュームゾーンである団塊ジュニアこそ、国内消費をけん引し、これからの日本経済を潤す立場にあるのだが、なぜか元気がない。

 しかし、そんな時代の流れに抗って、しぶとく生き抜いてきた人たちもいる。5月に出版されたノンフィクション『団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』(講談社/岩崎大輔)は、オイシックス社長の高島宏平氏、ヤフーCOOの川邊健太郎氏から俳優の山本太郎氏、漫画家のカラスヤサトシ氏など団塊ジュニア世代の著名人たちをインタビュー。彼らの共通体験である漫画雑誌「少年ジャンプ」(同社)の作品を通して、今後の混沌とした時代をどう生きていくべきかを問うている。今回は著者の岩崎氏に、本書の狙いを聞いた。

–団塊ジュニアの特徴とは、なんでしょうか?

岩崎 同世代について、5年以上前からずっと書きたいと思っていました。というのも、この世代にはホリエモンをはじめお金持ちの起業家たちがいる一方で、大企業に就職して一生安泰と思いきや、若くしてリストラに遭ったり、転職を繰り返さざるを得ない人たちがいる。さらに言えば、結婚したくてもできなかったり、ホームレスとなって生きざるを得ない人たちもいる。いわば下り坂に陥った時代の歪みを、もろに受けている世代なのです。

 今は明るい未来を描ける時代ではありません。将来は不安ばかり。僕たちより上の世代の人生設計にあった「40歳前後で庭付き一戸建ての家を買って、子供が2人いて、奥さんは専業主婦」という理想の風景がガラガラと音を立てて崩れているのです。そんな時代の変わり目の先頭を走っているのが、団塊ジュニアなのです。

–「少年ジャンプ」をタイトルに使った理由を教えてください。

岩崎 80年代に部数を300万部から500万部に伸ばし、この世代のバイブルとなったのが「少年ジャンプ」です。男の子なら、『ドラゴンボール』や『北斗の拳』『キャプテン翼』をだいたい読んでいる。ジャンプの漫画には「友情、努力、勝利」という3つの要素が必ず詰め込まれています。僕たちは知らず知らずのうちにジャンプの漫画を通して、この3要素を刷り込まれてきた。ジャンプを基準に置けば、世代の特徴が見えてくるのではないかと思ったのです。

–取材対象は起業家や元官僚、NPO代表、ボクサーなど多彩ですが、彼らの共通点はどこにあるのでしょうか?

岩崎 例えば、ヤフーCOOの川邊さんは渋カジ(「渋谷カジュアル」の略)で、ビンテージのジーンズというラフな姿ながらも、ヤフーという4000人以上の会社を切り盛りしている人です。イメージ的には軽やかで洒脱。最初は苦労なんて知らない人かなと思っていましたが、実際に聞くと20代で相当の苦労をしている。“IT1000本ノック”と称して深夜のファミレスで、仲間と一人100本の企画を出し合い、何度もブラッシュアップする激しい議論を重ねたといいます。「ザクとうふ」で知られる相模屋食料社長の鳥越淳司さんも雪印乳業のサラリーマン時代、営業で何度も土下座しまくっていたそうです。

 器用に過ごしてきたように見える彼らも、本当は泥にまみれた時期を過ごしているのです。成功したという上澄みの部分、学歴や職歴だけを見ていると、順風満帆のように思えるのですが、よくよく話を聞いてみると、なんらかの修羅場を経験している。そんなピンチの事態にどう対応するのか。要は、人生のどこかで必ず勝負をかけないといけない場面がくるということです。彼らは少なくとも、ピンチのときに逃げずに挑戦してきた人たちなのです。

–彼らは人生のマイナスの局面のときに、あきらめなかったということでしょうか?

岩崎 うまくいきかけたと思いきや、必ず足をすくわれる。人生はその連続だと思います。だからこそ、いちいちヘコたれないし、あきらめない。立って、歩いて、動いてれば、そのうち違う風景が見えてくる。うずくまったままだと、よくないと思うのです。

 彼らは失敗を恐れないし、陽気でもあります。ぐちぐちと文句があるなら、スパッと言えば? というタイプ。もしそうやって文句を言って、波風が立ったり、不遇な立場に追いやられたとしても、そこでがんばってさえいれば、必ず誰かが見ているものです。

 これからはどんな会社にいようが、一生安泰ということはありません。だからこそ、どうせ仕事をするなら、やりたい仕事をしたほうがいい。

 うつむいたまま夕方まで働いて、我慢ばかりしている。ストレスの固まりとなって、やつれて摩耗し切っているサラリーマンになってほしくないのです。僕は同世代の人たちが、生きざまが顔ににじみ出る、あのベーブ・ルースのようなカッコイイおじさんになってほしいと思っています。

成功への原動力

–取材された方々は、なかなかしぶとい人たちです。成功への意志も強いと思います。その原動力は、おカネなのでしょうか?

岩崎 かつておカネを稼ぎまくったホリエモンも、本当の核にあるのは、おカネではないと思います。あるのは、面白いものをつくろうということです。彼らには共通して「俺がすごいと思うものをつくれば、市場は絶対買う」というような考えがある。しかも、二の矢、三の矢もしたたかに考えています。そのスタートは誰もが心細かったでしょうが、彼らは実行してみたことで、新しい世界をつかんだのです。

–ただ、明るい将来をなかなか見通せないし、現実的にはおカネの心配もあります。

岩崎 これからの世界は、もっと予測不可能になっていくと思います。世界がフラット化したことによって、例えば、正社員の解雇を容易にする流れは今後強まるでしょうし、もしかしたら数年先には、日本でモノづくりができなくなるかもしれない。

 会社もそうです。勝ち組だと思っていたら、ある日突然海外から黒船がやってきて、瞬く間に市場を奪われ、負け組に転じてしまう。いつ足元をすくわれるかわかりません。

 つまり、日本という国の枠の中だけで考えていれば済んだ時代は終わったということです。僕も記者をしていて思うのですが、雑誌や本が売れなくなっている今、いつ会社から放り出されるかわからない。もし路頭に迷ったときに、どう生き残ればいいのか、その訓練をしないといけない。自分のセーフティーネットをつくらなければならないと思っています。

団塊ジュニアは、その先頭に立っています。

岩崎 90年代後半に、いわゆる護送船団方式が崩れ、これまでの非常に大きな価値観が壊れてしまった。僕たちの世代は、それを社会に出た直後の多感な20代のときに経験しました。社会が変わっていく姿をリアルタイムで見ている以上、どこかで勝負をかけなければ生き残れないという意識が頭の奥底にある。インタビューした方々は同じ時代を生きながらも、それぞれ違う着眼点を持って、今の自分の地位をつかんできたのです。そこに今後を生きていくための、なんらかのヒントがあると思うのです。

–団塊ジュニアである、ご自身の生き方は?

岩崎 僕は、幼いころから「努力は裏切らない」といった言葉が好きじゃなかった(笑)。がんばっても届かない、自分が越えたと思いきや、相手が一枚上手だった。人生で成功することなんてほぼない。失敗の連続で、ちょっとうまくいってもすぐに足元をすくわれる。ずっとそう思ってきたからこそ、もっと僕たちの世代を明るくしないといけないと思っています。開口一番、「どうせ」と言うような後ろ向きな人に、ぜひ読んでほしい。僕たちが明るくしないと、下の世代も明るくなれない。だから、僕も明るく、前向きに生きたいと思っています。
(構成=國貞文隆)

※『団塊ジュニアのカリスマに「ジャンプ」で好きな漫画を聞きに行ってみた』(講談社/岩崎大輔/1890円)

國貞文隆

國貞文隆

1971年生まれ。学習院大学経済学部卒業後、東洋経済新報社記者を経て、コンデナスト・ジャパンへ。『GQ』の編集者としてビジネス・政治記事等を担当300人以上の経営者を取材した経験がある。。明治、大正、昭和の実業家や企業の歴史にも詳しい。主な著書は『慶應の人脈力』『やはり、肉好きな男は出世する ニッポンの社長生態学』『社長の勉強法』『カリスマ社長の大失敗』など。

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