少し横道にそれますが、韓国経済がここ数年、ずっと危機的状況にあるということをご存じでしょうか?
IMF(国際通貨基金)には、「年次協議報告書」と呼ばれる加盟国の経済全般を毎年評価する制度があります。ここで韓国経済についてIMFは再三「韓国経済は下方リスクがある」「保証金のレベルが危険域にある」など、さまざまな警告を発しています。
その動向に大きな注目を集める世界最大級の投資機関・ゴールドマンサックスが韓国から撤退し、今年は4月末・5月末に大型の償還期限を迎える国債があり、さらには日本との通貨スワップ協定も終了という、極めて危機的な状況にあります。
昨今、もっぱら景気回復が完了したとの声が高いアメリカは、もし韓国経済が崩壊して金融危機が引き起こされ、市場が荒れるような危険はなんとしても避けたいところで、できれば「自分の懐を痛めずに」韓国を支援する資金を捻出しようと考えたのです。
その錬金術とは、日本に韓国の金銭的支援をさせることです。
●安倍首相の靖国参拝と思惑
日本の世論を考えると、政府は関係が悪化している韓国を積極的に助けるという選択をすることは難しい。しかし、正面から「NO」を突きつけることは国際的な非難を浴びかねません。
そこで一計を案じたのが、今回の安倍首相の靖国参拝です。
まず、過去のスワップなどの事例も見れば明らかなように、韓国人はプライドが高く、自分から援助の申し出などは絶対にしません。そこをうまく突き、「韓国がお願いしてくるのであれば、資金提供を拒まない」と世界に向けて配信した上で靖国参拝をし、韓国国民の反日感情を煽り、韓国政府が日本にお願いしにくい状況をつくり出したのです。
結果は案の定、韓国が「日本からの援助は必要ない」との立場を表明しました。この一連の流れにアメリカが不快感を示したのです。
このように見てくると、「disappointed」と言ったアメリカの発言の意図が浮かび上がります。つまり、靖国参拝そのものに対しての失望ではなく、「日本は韓国に対して資金援助をするものと期待していたのに裏切られた」というところが真意でしょう。
視点を変えると安倍首相の参拝は、いわば「韓国経済に救いの手を差し伸べない」という対外的な通告であり、それと同時に韓国に対する牽制だったと見て取れます。
(文=土居亮規/Business Library Butterfly)