相変わらずイケイケの三木谷社長
(撮影/Guillaume Paumier「Wikipedia」より)
また、注文した翌日に商品が到着する「あす楽」の対象商品・地域の拡充のため、在庫拡充と倉庫の増設などを行う。また、販売面においては、アマゾンが弱いというスマートフォンによる注文のほか、レコメンド機能の強化などに取り組む。さらに商品を供給する出版社との連携も強化する。販売情報の閲覧や商品登録などができるベンダーサービスを2014年から導入するとともに、年間を通じて販売促進をサポートする「Sales Relation Program」(SRP)への加入も促進している。
出版社だけでなくマスコミ各社も集まったこの説明会で、三木谷浩史代表取締役社長兼会長は、3年後の16年にkoboの年商を500億円に到達させるとし、さらに日本の電子書籍市場が1兆円になると予測される20年には、そのシェアの50%をkoboで獲得したいと息巻いた。
この目標を達成するためにも、(1)今夏までにベストセラーの80%の電子書籍化、(2)新刊本は紙と電子の同日発売を標準化、(3)紙の書籍の50%の電子化――を出版社に要望。こうした取り組みを進めて、電子書籍の市場規模を10倍にしたいと考えている。さらに、市場規模の拡大に当たって、楽天基準で判断した「優良コンテンツ」約2万点を楽天の負担で電子化したいとも申し出た。
電子書籍の推進は楽天の使命――。そこまで言ってのけた三木谷氏の大風呂敷が上記の内容だ。しかも、電子書籍の推進に賛同する出版社として、NHK出版、学研、角川GP、幻冬舎、講談社、小学館の社長や事業担当者を登壇させ、マスコミにフォトセッションの時間まで与えて、出版業界との緊密さをアピールした。出版社の支援がなければ単なるホラに終わってしまうであろうこの目標、一方で、三木谷氏なぜここまで強気な発言をしたのか。
この強気発言の裏には、三木谷氏と講談社の野間省伸社長との親密な関係にあると、某出版社の営業幹部が話す。
「三木谷さんと野間さんは、楽天の事業説明会の後に行われた懇親会でも終始2人で話し続けていたほど親密な関係。どうも野間さんは、『講談社は楽天のためなら何でもする』というようなことを三木谷さんに言ったと聞いている。また、12年のkobo事業開始時に、東京国際ブックフェアのブースも両社は隣同士。その上、楽天ブースでは講談社の電子書籍を前面に打ち出していたし、同フェアの基調講演の際には三木谷さんが『打倒 アマゾン』Tシャツなるものを野間さんにプレゼントするなどの親密さを見せていた(苦笑)。電子書籍の普及に関して、温度差はあるが、『アマゾンへの対抗』という点で意気投合したのだろう」
さらに、ある取次会社の営業担当者はいう。
「12年に楽天が出版流通に乗り出すという記事が出た。あれは、日本出版インフラセンター(JPO)という業界団体が進める『フューチャー・ブックストア・フォーラム』の実証実験に、楽天が流通業者として参加するという話がベースになっている。その実験とは、顧客が書店に注文した書籍を迅速に配送する実験を、楽天ブックスを通じて行うというものだ。テーマとしてはアマゾンに負けない客注流通の構築で、ここでもアマゾンの対抗馬として楽天が持ち上げられた」