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ルネサス、“異様な”株主総会から透ける迷走…借金とリストラ繰り返し、再建策示せず

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 1676億円の巨額最終赤字計上は事前に予想されていたので、市場関係者の間で驚きはなかった。したがって、決算発表では新年度に新社長として挑む鶴丸社長の事業構想や経営再建策に質問が集中した。

 だが、鶴丸社長は恥ずかしげもなく「事業計画は革新機構と協議中なので、今後のことは答えられない」と語り、記者たちを唖然とさせた。

 そして、革新機構など9社からの出資金払い込みが完了しないまま、6月26日の株主総会を迎えた。ここでも鶴丸社長が経営トップらしい責任感を見せなかったのは、冒頭の通りだ。

●携帯電話事業の失敗で、さらに広がる赤字

 翌6月27日、子会社のルネサスモバイル(モバイル社)が展開する携帯電話用システムLSI事業から撤退、今年12月末に海外グループ会社3社の営業を停止、海外従業員約1430人(モバイル社全体の70%強)を解雇すると発表。

 モバイル社はルネサスが発足間もない10年7月に、フィンランドの大手通信機器メーカー・ノキアの無線モデム事業を2億ドル(当時の為替レートで約180億円)で買収して設立した会社。

 しかし、買収直後からスマホが急速に普及。この影響で、当てにしていたノキアの携帯電話機事業が急激に失速したため、累積営業赤字が450億円(13年3月末)に膨らんだ。ルネサスはこの穴を少しでも埋めようと、富士通や韓国サムスン電子へのモバイル社売却を図ったものの相手にされず、結局事業撤退に追い込まれた。

●便利な下請け体質

 ルネサスは、自動車用マイコンで42%、汎用マイコンで27%の世界シェアを誇りながら、前身企業から数えて8期連続の業績赤字を脱却できないでいる。それもさることながら、四半期ベースの決算でも、会社発足以来ずっと業績赤字を続けている。では、どうして「生まれてこのかた黒字を見たことがない」(関係者)会社になっているのだろうか。

 これについて業界関係者は「言いなり下請け体質にある」と、次のように説明する。

 そもそも同社は、NEC・日立・三菱電機の半導体部門を寄せ集めてつくった会社であり、「製造部門ありきで、営業部門は御用聞き程度の能力」で、そのため「適正利潤を確保するための価格交渉力がない」というのは業界内で有名。

 これを如実に示すエピソードが、「1500億円の第三者割当増資の舞台裏」と言える。

 昨年夏、債務超過回避のため、当時の赤尾社長が米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に出資要請をしたとき、それを知った某大手自動車メーカーの購買担当役員に赤尾社長は呼びつけられ、カミナリを落とされたという。

 それで赤尾前社長はKKRとの交渉を中止。その後、経産省の「日の丸半導体の最後の砦は潰さない」との意向もあり、最終的に革新機構と自動車、電機などの顧客企業8社による計1500億円の第三者割当増資が決まったといわれる。

 また、今年2月の就任記者会見で、いみじくも「顧客に愛される会社にしたい」と語った鶴丸社長の言葉も、同社の言いなり下請け体質を反映したものといえる。

 鶴丸社長のこの言葉には「顧客に愛されるためには『無理も聞きます』とのニュアンスが込められていた」(関係者)からだ。実際、自動車メーカーがKKRのルネサス支援を容認しなかったのは、「自分たちの言いなりになる下請けを、外資に奪われるのを嫌ったから」ともいわれる。

 しかし、顧客企業8社の値下げ要求に「ご無理ごもっとも」と対応している限り、「まるで穴のあいたバケツ」(関係者)のような経営はいつまでたっても終わらない。責任感のある経営者も生まれない。8社にしても「言いなりになる下請け」は、重宝ずくめではない。

 製造コスト削減のため、ルネサスに出血サービスを求め続ける限り、出資の配当は望めず、挙げ句の果ては「便利な下請け」そのものを潰してしまいかねないからだ。

 今年10月1日には、革新機構がルネサスの株式数の約70%を占め、経営を支配する予定だ。その時、革新機構がルネサスの下請け体質を脱却できる気概と資質のある経営者をトップに据えられるか否かで、ルネサスの命運は決すると見られている。

 ルネサスはバケツの穴を塞げるのか、あるいは自力再建を断念したエルピーダメモリの後を追うのか。業界関係者の関心は、今秋のトップ人事に集まっている。
(文=福井晋/フリーライター)

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