しかし一難去ってまた一難。これで安心して経営再建を進められる状態ではない。財務基盤は依然として不安定で、他社による買収観測も絶えることがない。
アイフルは強引な営業活動や「ヤミ金並み」と言われる悪質な取り立てが違法だとして社会問題になり、05年4月に「アイフル被害対策全国会議」が結成された。また、06年4月には財務省近畿財務局長から全店舗の業務停止命令を受けた。
これらの影響で業績が急低下し、10年3月期連結決算は3000億円近い最終赤字に転落するなど、経営悪化が一気に表面化した。
その結果、アイフルは09年9月18日に産業活力再生特別措置法所定のADRを利用した経営再建方針を発表。同月24日にADR認証団体の事業再生実務家協会にADRを受理され、同年12月24日、資金調達先の金融機関約60社との間でADRが成立した。具体的には、金融機関からの借入金合計2721億円のうち、760億円を5年内に分割返済、残り1961億円を5年間の返済猶予の計画でアイフルは経営再建に入った。
そしてADR成立後は、相次ぐリストラを行い、14年3月期は全店舗数を703店、社員数を1310人にまで削減している。これは最盛時の06年3月期と比べると、店舗数を約26%、社員数を13%まで縮小したかたちになる。このほかにも、「投資用有価証券や閉鎖した店舗など、売れる資産は片っ端から売り払った」(アイフル関係者)という。
暗い、残債完済の見通し
こうしたリストラによる営業経費の削減で返済資金を捻出し、計画を上回る返済を行ってきた。それでも今年7月10日の債務返済期限には1617億円の残債が確実となり、再び金融機関に返済猶予を申し入れざるを得なかった。
かくして、実質2回目のADRが成立したわけだが、それでもアイフルの経営再建に不安感が強いのは、同社が独立系であることだ。どこの大手金融機関グループにも属していない同社は、経営再建の資金調達がままならず、顧客から回収した利息と元金を原資に、営業貸付と過払い金返還を辛うじて賄っている状態。新たに5年の猶予を与えられたとはいえ、残債完済の見通しは極めて暗い。
その最大要因が、経営危機の引き金となった過払い金返還だ。過払い金返還額は毎年300億円超の高止まりで推移している。業界関係者は「過払い返金額は毎年ADR返済計画を上回っている。このため、表沙汰にならない程度の強引な取立ては相変わらずの噂もある」と口を濁す。
外資系債権者の圧力と、高い金利負担
さらに再建の足を引っ張っているのが、ヘッジファンドなど外資系債権者の増加だ。「1回目のADR成立時、外資系債権者は2%強にすぎなかったが、今は約30%まで急増している」(同)という。ADR成立後、アイフル倒産を見越した生命保険会社、地方銀行などの国内債権者が、アイフルのADR債権を二束三文で外資系に売り払った結果だ。
債権者の3分の1を占める外資系債権者の圧力は、今回のADR交渉でも最大の難関になった。アイフル関係者は「外資系債権者たちとの交渉は、『一括返済するか、株式を差し出すか』の二者択一の要求から始まった」と打ち明ける。厳しい交渉の末、最終的に合意したのが約300億円の実質外資系債権者向け社債発行だった。この社債は、アイフルの営業貸付の上限金利が法律で18%に抑えられている中で、年利8%という高利の社債だ。これで「働いても働いても営業利益の大半を外資系債権者に吸い上げられる仕組みになった」と、アイフル関係者は嘆く。
それだけではない。今回の借り換え融資分約800億円についても、年利は3~4%になる見込み。1回目のADR残債1610億円の金利は2%でしかなかった。
つまり、今回のADR合意で、外資系債権者向け社債の8%に加え、借り換え融資の3~4%という重い金利負担をアイフルは背負い込むことになった。加えて、返済猶予になる527億円も、20年4月までに25%相当分の132億円を返済し、残り395億円は同月まで繰り延べられるにすぎない。この時期は社債約300億円の償還時期とも重なる。結局、6年後には合わせて約700億円の返済がアイフルにのしかかってくる。
14年3月期の業績は数年ぶりに好転したとはいえ、このADR条件で同社がどこまで経営再建を進められるのか、業界関係者ならずとも不安を覚えるのは当然といえる。そんなアイフルを「虎視眈々と狙っているのがJトラスト」と業界関係者の一人は明かす。Jトラストは経営破綻した貸金業者を次々と買収して成長してきたノンバンク。武富士買収で消費者金融に参入したものの、悪名高かった武富士ブランドでの営業が苦戦している。「そこで目を付けたのが、曲がりなりにも消費者金融大手として看板に『泥が付いていない』アイフル」というわけだ。
株式市場関係者はもとより、何よりも過払い金返還請求中のアイフル債務者にとっては、同社の動向から目を離せないようだ。
(文=田沢良彦/経済ジャーナリスト)