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井上久男『「内なる敵」に沈む朝日新聞』(9月24日)

朝日新聞、任天堂記事捏造・隠蔽の背景に好き嫌い人事の横行 公正な処分は下せるのか

文=井上久男/ジャーナリスト
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 東京経済部長は、「この2年間で成長した」などとして任天堂の担当記者をかばう動きを見せている。その一方で、「『吉田調書』取材班に対しては人権蹂躙とも取られかねない社内調査が続いていて、調査する側からもあんな仕事はしたくないという声が出ている」(朝日中堅幹部)という。対応に差が出るのは、経済部の記者は盲信的に組織に従う「お利口さん」タイプが多く、将来があるのでなんとか守ってやりたいといった力学のようなものが働いているからではないか。これに対し、吉田調書を担当した特別報道部は、一匹狼的な活動をして組織には迎合しないタイプの記者が多いため、トラブルを契機に週刊誌などの敵対的メディアよりもむしろ会社側が攻めたてているのである。

 筆者は、この両問題の処分の平等性に注目している。なぜなら、繰り返しになるが、朝日の場合、好き嫌い人事が横行し、適材適所ができない傾向にあるうえ、重大な犯罪でもしない限り、将来を嘱望されている人材は不祥事に関わっても軽い処分(社会の批判をかわすための形式的な処分)で済まされ、ほとぼりが冷めた頃に復活してくるからだ。木村社長が東京編集局長時代に更迭された後、欧州総局長などを務め、取締役に選任、社長にまで登りつめたことがその象徴的な人事といえる。パワハラやセクハラの類も日常茶飯事だが、こうした問題を起こしても、将来を嘱望されている人材は組織を挙げて守り通す傾向にある。

 いってしまえば、ゴマすりして会社の覚えがめでたい人材は軽い処分、ジャーナリストとして志高く我が道を行くタイプの扱いにくい人材は重い処分を平気で行う会社なのである。こうした風土も、懲りずに大きな不祥事が度々起こる遠因ではないだろうか。完全に世間をなめていると筆者は思う。
(文=井上久男/ジャーナリスト)

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