「Thinkstock」より
新川の16年3月期第1四半期業績は、売上高が前年同期比78.3%増の46億9000万円、営業利益は4億円の黒字(前年同期は7億5300万円の赤字)、経常利益は4億2900万円の黒字(同7億8700万円の赤字)、純利益は3億2500万円の黒字(同7億9000万円の赤字)だった。この数字だけみると、顕著な急回復である。
すんなりとはいかない黒字化への道
四半期ベースで黒字を確保したのはほぼ5年ぶりのことだった。スマートフォン(スマホ)市場の拡大などに支えられ、半導体投資も広がっており、実際に前工程の半導体製造装置メーカーは受注が旺盛なところもあり、次は新川のような後工程装置の需要拡大が始まるだろうという楽観的見方もあった。
しかし、どうやらそれほど現実は甘くはないようだ。新川は韓国大手メモリメーカーや中国大手OSAT(後工程受託製造)メーカーなどの投資拡大に支えられ、ワイヤボンダ受注が拡大しているものの、中国景気失速懸念から同国メーカーの納期調整やスマホの在庫調整などもあり、今後の見通しについては不透明感が広がっている。
足元では売り上げの拡大に加え、子会社への生産集約や人員削減など合理化効果が浸透しているのは確かで、会社側の正式発表数字は今でも16年3月期の通期予想は8年ぶりの黒字回復見通しだ。
しかし実際には、すでに期初予想よりも通期予想は下方修正されており、受注減速懸念が広がっているのだ。黒字回復見通しながら、その予想はすでに一歩後退している。今後さらに減速懸念が現実のものになると、黒字回復はさらに1年先送りになる可能性もある。
統計も景気減速を映し出す
新川の強みは無借金経営であり、今でも自己資本比率は9割近い。したがって経営基盤は安定的であり、赤字が7年続こうが8年目もやはり赤字になろうと、そのことで致命的なことにはならないだろう。それでもやはりこのままずっと赤字経営が続いていいはずはない。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)