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アマゾン、なぜ急速にコストコ化?会員を「無料&特典漬け」で客囲い込みに本腰

文=寺尾淳/ジャーナリスト
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 一時期は全品送料無料化した「ECカレント」も「ヤマダウェブコム」も、一部有料に戻している。「ケーズデンキ オンラインショップ」は約1年前まで全品送料無料だったが、15年3月にそれを取りやめた。

 それぐらいネット通販にとって送料無料の競争は苛酷なこと。期間限定ならともかく、常時継続するのは難しい。宅配業者の仕事がない不況時なら、業者に値下げさせてコストを転嫁させることもできるだろうが、今はそんな状況ではない。ネット通販企業が送料のコストの大部分を自ら負担すれば事実上、消費者に対して値引きをしているのと同じことになる。

 それでも、なんとかして配送コストを削減したいアマゾンは、配送業者に値引き要請を続けていた。最初は日本通運の「ペリカン便」だったが、05年頃に佐川急便に切り替わり、13年にヤマト運輸の「宅急便」に切り替わっている。アマゾンの値引き要請に音をあげて業者がコロコロ変わるようでは、全品送料無料の取りやめは自然な流れだったといえるかもしれない。

特典で「アマゾンプライム」に誘導する作戦

 だが、ネット通販業界にとってひとつの脅威だった全品送料無料が終わっても、転んでもタダでは起きないのがアマゾンである。昨年あたりから、購入頻度が高いユーザーをアマゾンプライム会員に加入させる販促策を強化しており、4月の送料有料化でそれをいっそう加速させ、テレビCMも打っている。

 以前のプライム会員の特典は、「お急ぎ便」(360円)、「当日お急ぎ便」(514円)、「お届け日時指定便」(360円または514円)、送料が無料でない大型商品などの「特別取扱商品」が無料になり、家族2人まで家族会員になれたり、タイムセールに30分早く参加できるぐらいだった。それに昨年あたりから、タブレット端末などハードの割引購入、無料の音楽配信「アマゾンプライムミュージック」、映画など無料の映像ソフト配信「アマゾンプライムビデオ」、大都市圏で商品を最速1時間以内に配達する「プライム ナウ」などの新サービスが加わった。プライム会員限定の1日だけの「プライムデー」も、昨年は7月15日に実施されている。今年4月からはそれに「全品送料無料」が新たな特典として加わることになる。

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