約1年前、本連載でガソリンスタンド(以下、SS)が急激に減少し、地方の過疎地で“石油難民”を生み出している実態を指摘した。SSの減少はその後も止まるところを知らず、危機感を抱いた経済産業省資源エネルギー庁を中心とした関係団体は、「SS過疎地対策ハンドブック」なるマニュアルを作成する事態にまで至っている。
このハンドブックは、経済産業省資源エネルギー庁、石油元売各社、全国農業協同組合連合会、石油連盟、全国石油商業組合連合会(各都道府県石油商業組合)で組織された「SS過疎地対策協議会」が作成した。
SS減少の実態をみてみると、全国のSS数は1994年度末の6万421カ所をピークにその後は減少が続いており、14年度末時点で3万3510カ所と約半数に減少している。その原因はガソリン需要の減少、後継者難等によるところが大きい。
ガソリン販売量は、少子高齢化や自動車の燃費向上等といった構造的な要因のため、今後も減少傾向が続くとみられている。この販売量の減少は、SSの減少に直接的に影響を与えている。SSでは商品の差別化が難しいことから、どうしても価格競争に走ることになる。特に人口減少が著しい地域ではSSの収益率が低下している。
突如としてSS過疎地問題に直面
地域別に分析すると、首都圏など大都市部での減少率が大きい。2005年度末から14年度末の10年間でSSの減少率は全国平均が29.6%なのに対して、東京都では37.9%、大阪府37.1%、神奈川県35.0%も減少している。これは、セルフ化による設備大型化に関わる投資が進みやすく、SSの集約・統合が進んでいるためだ。都市部のSSはコンビニエンスストアなど他業種への転業がしやすいという特徴がある。
一方で、SS過疎地の多い地域では、過疎そのものの影響によりSSの転廃業が進みにくく、同期間の減少率は沖縄県では15.8%、北海道22.9%、富山県23.3%、長崎県23.8%となっている。これらの地域では、設備更新が進まず設備の寿命や経営者の高齢化に伴いSSの閉鎖・共倒れが相次ぎ、突如としてSS過疎地問題に直面するリスクがある。
都市部と過疎地では月間のガソリン販売量が大幅に異なる。全国平均132キロリットルなのに対して、都市部では476キロリットルと3倍以上の販売量があるのに対して、過疎地では24キロリットルと全国平均の6分の1程度の販売量しかない。