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円高の悪夢、再び到来の兆候…企業努力を吹き飛ばす威力、日本経済に大きな逆風

文=真壁昭夫/信州大学経法学部教授
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 ひとたび通貨が乱高下したり株価が急落するなどして市場が混乱し始めると、それを抑えることは容易ではない。そのなかで金融緩和を進めても、緩和の規模や内容が市場の期待を下回れば、市場参加者は「中央銀行に裏切られた」と考えるはずだ。その結果、金利が急上昇するなど実体経済にも無視できない影響が及びやすい。

 そこで、BOEは積極的な緩和姿勢を出すことで市場の信頼、安心感を得ようとした。決定後の会見でカーニー総裁は「すべての政策には拡大の余地がある」とハト派姿勢を鮮明に打ち出し、当面の懸念払しょくに力を入れる姿勢を示した。これは先行きのリスクを抑制する予防的措置といえる。今後、株式市場が下落するなど先行き不透明感が高まる場合には、BOEの追加緩和期待が高まりやすいだろう。

世界的に強まる金融緩和の流れ

 主要国のなかで年内の利上げの可能性があるのは、米国だけといえる。ほかの地域を見ると、日本、ユーロ圏等の中央銀行は金融を緩和してきた。ここに英国の金融緩和が加わり、主要国の金融緩和の流れは追加的に高まった。これは為替レートの切り下げ競争が進む可能性を高めている。

 米国の経済動向は各国の為替レートに大きな影響を与える。円の動向は日本の事情で決まるわけではない。それは米国を基軸とする世界経済の動向に左右される。そこで注目したいのが、米国の金融政策の動向だ。

 これまで、中国経済の減速等が市場を混乱させてきた。それでも世界経済が危機的な状況に陥らなかったのは、米国経済が緩やかな回復を続けてきたからだ。それが利上げ期待を高め、昨年半ばまでのドル高につながった。歴史的に、米国政府は経済が好調でドル高の影響を吸収できると考えられる場合、多少のドル高は許容し寛大にふるまうことが多かった。

 しかし、いつまでも米国の緩やかな景気回復が続くわけではない。景気循環の周期に照らすと、米国経済は2009年6月にボトムを付け、景気拡張は7年超に及んでいる。過去の平均的な拡張期間は5年程度だ。徐々に景気はピークに近づいている可能性がある。

 昨年ごろから米国の企業経営者は、ドル高による収益減少を懸念してきた。米国政府の関係者も、ドル安を志向している。世界の金融緩和の流れが徐々に強まるなか、今後、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに積極的になれば、多くの投資家はドル買いに殺到するだろう。それが米国経済を追加的に圧迫するリスクは無視できない。

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