安倍晋三首相は昨年末、富士フイルムホールディングス(HD)の古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)とゴルフを楽しんだ。2016年12月29日付時事ドットコム「首相動静」には、次のように記されている。
「午前7時2分、東京・富ヶ谷の私邸発。同8時8分、神奈川県茅ヶ崎市のゴルフ場『スリーハンドレッドクラブ』着。昭恵夫人、古森重隆富士フイルムホールディングス会長夫妻とゴルフ。午後3時36分、同所発」
また、安倍首相は元日、キヤノンの御手洗冨士夫会長と同じゴルフ場でプレーした。17年1月2日付時事ドットコム「首相動静」を見てみる。
「午前7時32分、静養先の東京・六本木のホテル『グランドハイアット東京』発。同8時26分、神奈川県茅ヶ崎市のゴルフ場『スリーハンドレッドクラブ』着。経団連の御手洗冨士夫名誉会長、榊原定征会長、渡文明JXホールディングス名誉顧問とゴルフ。午後2時52分、同所発」
安倍首相と財界人のゴルフには、相手によって温度差がある。古森氏とのゴルフは夫婦同伴だ。古森氏はJR東海の葛西敬之取締役名誉会長と共に、安倍首相が自民党の若手幹部当時から、「四季の会」をつくり支援してきた。そして古森氏は、第1次安倍内閣時代にNHKの経営委員会の委員長に就任している。
米倉弘昌氏が経済団体連合会会長を務めていた時代に、経団連と安倍首相の関係は極度に悪化した。経団連との関係修復を図るべく御手洗氏は、安倍首相と経団連首脳がゴルフをする窓口になったという経緯がある。安倍首相が財界人とゴルフをする時のメンバーを人選するのが御手洗氏の役割だ。
ところが、“安倍首相派”といわれる古森氏と御手洗氏は16年、東芝メディカルシステムズの争奪戦で激しいバトルを繰り広げた。
東芝メディカル争奪戦でキヤノンに敗北
医療をこれからの成長分野と位置付けている企業は多い。16年には、異業種による医療関連のM&A(合併・買収)が相次いだ。その最大の案件が東芝メディカルだった。同社は、コンピュータ断層撮影装置(CT)や磁気共鳴画像装置(MRI)などの画像診断関連に強みを持ち、年商は4000億円規模だ。
東芝は15年、不正会計(粉飾決算)が発覚。債務超過になることを回避するために虎の子の東芝メディカルを売却することにした。