燃費不正問題に揺れた三菱自動車工業は2016年12月14日、臨時株主総会を千葉市の幕張メッセで開き、日産自動車のカルロス・ゴーン社長ら11人の取締役を選任した。
日産は10月、三菱自に34%出資する筆頭株主となった。三菱自の新体制は、ゴーン氏が会長、三菱商事出身で三菱自の会長兼社長だった益子修氏が社長専任となった。三菱商事と三菱重工業、三菱東京UFJ銀行の“三菱御三家”も支援を続ける。
三菱自の17年3月期最終損益は、2396億円の赤字(前期は725億円の黒字)となる見通し。ゴーン氏は信用の回復や業績の黒字化など「3つのコミットメント(必達目標)に取り組む」と強調した。
三菱自にトレバー・マン氏を送り込む
日産・仏ルノー連合の15年の世界販売台数は822万台と、世界4位だった。ゴーン氏は三菱自が日産・ルノー連合の一員に加わることで、トヨタ自動車、独フォルクスワーゲン(VW)、米ゼネラルモーターズ(GM)の世界トップ3に肩を並べることができると考えている。
いずれ世界首位となり「ゴーン帝国」を築くことが、ゴーン氏の最終目標であることは間違いない。
それには、三菱自の再生が不可欠だ。三菱自は監督と執行を明確に分け、成果に連動した役員報酬制度を取り入れるなど、「ゴーン流」の改革に取り組む。この手法は、かつて日産を再生させた「日産リバイバルプラン(NRP)」をほうふつとさせる。
仏ルノーは1999年6月、ゴーン氏を日産のCOO(最高執行責任者)に送り込んだ。ゴーン氏は同年10月に日産3カ年再建計画のNRPを発表し、具体的な数値を掲げた。初年度に黒字化、3年後までに自動車事業における実質有利子負債を7000億円以下に半減する。連結売上高営業利益率を4.5%に引き上げるという3つのコミットメントだった。
「コミットメントを1つでも達成できなければ、自分を含めた取締役全員が退任する」と言い切った。「未達ならば辞める」と公言した大企業の経営者は、日本では彼が最初だといわれている。
国内5工場などを閉鎖し、2万1000人の人員を削減。子会社・関連会社1400社のうち、4社を除くすべての会社の保有株式を売却。さらに下請け企業の再編を進めた。荒療治の結果、日産の業績はV字回復を果たした。