ゴーン氏は三菱自のCOOにトレバー・マン氏を送り込んだ。マン氏は日産のすべての地域を統括するチーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)である。
マン氏は、三菱自でゴーン氏が日産で行ったのと同じ手法を実行する。三菱自の業績のV字回復を果たせば、ゴーン氏の後任として三菱自のCEO(最高経営責任者)になるか、益子氏に替わって社長兼COOになる可能性が高い。
だが、日産のNRPと三菱自の再建には決定的な違いがある。NRPは日産社内の若手・中堅幹部を中心とした組織、クロス・ファンクショナル・チーム(CFT)がまとめたものだった。
一方、三菱自は17年5月をメドに中期経営計画をまとめる。それまでに、マン氏が日産のCFTのような若手幹部の改革の意欲を結集する体制をつくり上げることができるかどうかがカギになる。ところが、三菱自に内から沸き上がる改革の意欲は乏しい。三菱自がこうなった最大原因の益子氏が社長を続投したことで社内は白け切っている。
日産のアキレス腱、国内販売に庄司茂氏を起用
日産の小型車「ノート」が16年11月に国内販売で1万5784台を記録し、軽自動車を含めた全銘柄のランキングで初めて1位になった。日産車が月間販売台数でトップになるのは80年9月のサニー以来、30年ぶりのことだ。
これが大きなニュースになること自体、国内での日産車の影が薄かったということの証明だ。コストカットで鋭い切れ味を示したゴーン氏だが、自動車を売ることは不得手だ。11~16年度の中期経営計画では、日本市場の「セールスパワーの向上」を掲げたが、12年からは国内販売台数は5位に定着したままだ。
15年の日産の国内販売台数は57万台。トヨタ(205万台)、ホンダ(66万台)、スズキ(63万台)、ダイハツ工業(58万台)の後塵を拝している。
ゴーン氏は16年5月12日に開いた決算会見で、国内市場の販売が低迷していることについて、「3~5位というのは普通ではない」とした上で、「(上位進出を)決してあきらめない」と力説した。
そこで、国内販売を強化するために、外部から人材をスカウトした。
日産は12月1日、日本ネットワーク戦略本部の本部長に、庄司茂氏(53)が11月16日付で就任したと発表した。国内のディーラー網の構築や再建を進める部門のトップだ。