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航空経営研究所「航空業界の“眺め”」

米国、今まで他国に航空自由化押し付け、今度は米国への参入規制の横暴

文=牛場春夫/航空経営研究所副所長

米国の航空業界の反応

 米国の航空業界は、NAIの乗入れ申請にヒステリックに反応した。何しろニューヨークと欧州間を、現行運賃の半値の片道200ドル弱で販売するというのだから、この路線を運航している既存の航空会社への影響は甚大だ。米メジャー3社と労働組合6団体は、こぞって反対を表明し、DOTに対してNAIの申請を却下するよう陳情した。アイルランドに“傀儡”航空会社を設立して、ノルウェーの労働法では到底雇用できないアジア国籍の低賃金の客室乗務員を採用するというのはオープンスカイ協定の労働条項に抵触する、というのが彼らの言い分だ。

 そして、オープンスカイ協定の恩恵を得るために設立されたNAIは、海運業界でより有利な条件の国に船籍を移すフラッグオブコンビニエンス(便宜置籍)に相当すると主張し、米国の雇用機会減少を引き起こすと警告した。米メジャー3社と組合の強硬な反対に直面したDOTは逡巡し、最終的な承認を3年間も遅らさざるを得なかった。EUからの「EUの正当な航空会社のオープンスカイ協定に基づく、当然の米乗入れ権行使の早期承認」を求める圧力もあり、DOTはオバマ政権任期の最後でこれを承認したのだ。組合6団体は、すぐさま今年1月13日、合衆国控訴裁判所(ワシントン)に対して、DOT認可の正当性のレビューを正式に要求した。

 さらに米メジャー3社は、中東3社(エミレーツ航空、カタール、エティハド航空)の米国路線便数の急速な拡大についても問題視している。中東3社は04年以降、420億ドルの政府補助金を得ているので、彼らとの公平な競争環境が担保されていないという主張だ。そしてDOTに対して、中東3社へのオープンスカイ協定の見直しを要求している。

 ノルウェー・エアシャトルも中東3社も黙っていない。ノルウェー・エアシャトルは、効率の良いスケジュール作成上の理由だけからアイルランドに子会社を設立したのであって、米路線に対するアジア国籍の低賃金乗務員の採用は計画していないと反論し、米国内でパイロットの基地を3カ所新設して、雇用増加に貢献することを約束した。

 一方、中東3社は、今まで補助金を受け取ったことなど一切なく、旅客シェアの向上は高いサービス品質によるものだと主張し、政府補助金を得ているのはむしろ米メジャー3社のほうだと反撃している。米メジャー3社は2000年以来、連邦破産法の適用による会社再建で、推定700億ドルの政府補助金に相当する支援を受け取っていると主張している。

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17:30更新
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