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金子智朗「会計士による会計的でないビジネス教室」

破産のてるみくらぶ、危険な「ドンブリ勘定」…「たくさん金がある」という勘違い

文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表
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使い道のドンブリ勘定

 支払いの前に先にお金が入ってくると、一時的に手元資金が潤沢な状態になるので、そこでもうひとつの勘違いを起こす。「使えるお金がたくさんある」という勘違いだ。

 あとから売上代金が入ってくる“普通の順番”の場合は、この勘違いは起こしにくい。この場合は仕入に対する支払いはすでに終わっているので、手元にあるお金は実際に「使えるお金」だからだ。

 しかし、お金が先に入ってくる場合は、これから航空会社やホテルに費用の代金を支払わなければならない。それを忘れて、すべてが「使えるお金」と勘違いしてしまうのだ。この勘違いを起こすと、広告宣伝費などに過剰なお金を使ってしまう。場合によっては、夜な夜な高級レストランやクラブで交際費という名の飲食代に消えていくなどということもある。

 広告宣伝費や交際費などのいわゆる間接費は、旅行代金からそれに直接かかる航空運賃や宿泊費などの直接費を引いた残りから使うものだ。しかし、お金が先に入ってくると、一時的に潤沢になる手元資金を勘違いして、広告宣伝費などの間接費を必要以上に使ってしまうのだ。これが「使い道のドンブリ勘定」だ。

まっとうな“会計感覚”があれば防げた

 キャッシュだけで考えると、上記のような勘違いを起こしやすい。

 この点、会計はうまくできている。会計とは「お金の動きを記録する手段」ではない。会計は「企業活動全般を記録する手段」だ。だから、お金の動きとともに、それに伴う債権・債務(権利と義務)も記録する。そこに会計のミソがあるのである。お金の動きを記録すればいいだけなら、お小遣い帳で十分だ。

 会計上は、顧客から先に代金を受け取った時点では売上として計上しない。売上として計上するのは、旅行というサービスの提供義務を履行したときだ。「お金をもらう=売上高」と思っている人が少なくないが、そうではない。代金をもらった時点では会計上は前受金として計上する。この前受金は負債に計上される。先に代金をもらった以上、それに対するサービスを提供する義務を負うので、会計上は負債として認識するのだ。もらったお金は、まだ自社のものとして確定していないということも意味している。

 このような“会計感覚”があれば、てるみくらぶもこんなことにならずに済んだのかもしれない。やはり、経営者はもっと会計を学ぶべきなのである。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)

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