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山田修「間違いだらけのビジネス戦略」

東芝と日本郵政の巨額損失を主導した戦犯、西室泰三氏の「突出した権力所有欲」

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 不正問題で揺れる東芝が次期社長の選定に苦慮したときに、西室氏は日本郵政社長としての定例会見で「本人が辞めると言っていたが、私が絶対に辞めないでくれと頼んだ」結果、現社長に室町正志氏(当時会長)が就任した、と語っている。つまり、自らが東芝のキング・メーカーだと広言したにほかならない。

合わせて1兆円超の損害の発生

 西室氏は所有欲の強い人なのだろう、と私は思う。同氏の所有欲の強さは会社経営に当たっては、意思決定力を自らのものとして保持しようとして表出した。主要人事の決定や、海外大型M&Aなどの重要な意思決定の場面でそれは突出して発揮されてきた。

 それらの重要な意思決定が十全なものとして発揮されれば、それは名経営者ということになるのだが、西室氏の場合は「自分はこう決めた、後は任せた、あるいは知らない」と解されるような対応である。その最たる例が、買収したトール社を日本郵政の下に直接つけず、子会社である日本郵便のそのまた子会社に配したことだろう(日本郵政が親会社で持ち株会社、日本郵便は子会社で事業会社)。

 日本国内で津々浦々に郵便局を展開することだけを主要業務としてきた日本郵便が、突然預けられた海外法人であるオーストラリアの巨大会社を無事管理運営できるとでも西室氏は思ったのだろうか。M&A後の正念場となるPMI(Post Merger Integration:買収後統合)の見地からはとても理解できない配置である。

 独断的な巨大買収はつまり、西室氏にとって自らの権力の誇示であり、所有権の再確認という要素が強かったのではないかというのが私の解釈だ。自ら決めればポンと数千億円もの買い物ができる―陶酔感も強かったのではないか。

 日本郵政におけるトール、そして東芝におけるウェスティングハウスの買収、この2つの案件による2社での損害計上は1兆円を超えた。西室氏の「損害関与への突出ぶり」は特筆ものである。

 年商1兆円規模の企業価値を毀損した例としては、負債総額1兆8700億円で旧そごうを倒産させた故・水島廣雄氏や、1兆円の売り上げを達成した後にダイエーを凋落させた故・中内功氏などが記憶にある。

 西室氏の場合はさらに2つの異なる大企業で、大損害に至る意思決定に大きく関与した、あるいは主導した経営者だ。こんなスケールの大きな経営者はこれからも滅多に出ないのではないか。その意味で、「平成の大残念経営者」として私たちの記憶にとどまることだろう。
(文=山田修/ビジネス評論家、経営コンサルタント)

※ 本連載記事が『残念な経営者 誇れる経営者』(ぱる出版/山田修)として発売中です。

撮影=キタムラサキコ
●山田修(やまだ・おさむ)
ビジネス評論家、経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導の第一人者。「戦略策定道場」として定評がある「リーダーズブートキャンプ」が2月から開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 「社会人勉強心得帖」』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。

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