アマゾンやネットフリックス、映画並み独自作品配信…視聴者のテレビ離れが最終局面
米国では現在、「テレビからモバイルへ」「放送から配信へ」というテレビ番組視聴の大きな変化のなかにある。
米国の有料チャンネルの契約は1億世帯に上り、その22%をケーブルテレビネットワークの大手、コムキャストが握っている。一方で、郵送ベースのレンタルDVDサービスから出発したネットフリックスは、オンラインでの動画配信サービスを展開し、2017年第2四半期には世界で1億395万契約に上る、最も巨大な映像配信プラットホームになりつつある。
そんなネットフリックスに衝撃を与えたのは、米国のコンテンツ業界の巨大勢力、ウォルト・ディズニー・カンパニーだ。8月8日に同社は、18年にスポーツ中継、19年に独自の映像配信サービスを開始することを発表し、19年までに、これまで活用してきたネットフリックスとの契約を打ち切ると発表したのだ。
その背景として、動画配信企業BAMテックへの出資比率を75%に引き上げ、実質的に買収したかたちとなった。ディズニーは自社のコンテンツや放映権を生かして、独自に視聴者を集めていく「攻めの戦略」に出た、との見方が強い。
目先はマイナス要因も、長期的にはプラスに
ウォールストリートの反応は、ネットフリックスに対しては巨大で強力なコンテンツであるディズニーを失うことがネガティブ材料となった。意外だったのは、ディズニーについても、ダウ平均株価を1銘柄で28ドルも押し下げるほどの「売り」として反応が出たことだ。
ディズニーが独自の映像配信サービスへ移行する方針を打ち出したことは、つまりネットフリックスが持つ世界1億人の視聴可能な潜在顧客を、19年に一旦「ゼロ」にリセットすることを意味しているからだ。
ネットフリックスは11年第1四半期に2300万人だったストリーミング契約者数を、5年以上かけて1億人に伸ばしてきた。ディズニーが同規模に追いつくまでにも、それなりの期間がかかり、その分の収益を手放すと映った。
もちろん、11年当時と現在では状況が違う。インターネット回線は(米国でも)高速化が進んでおり、また人々がモバイルデバイスで映像を見るスタイルが定着しつつあり、追いつくまでの期間は短縮されると考えて良い。