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マイケル・ジャクソンも悩んだ皮膚が白くなる難病「白斑」…治療に光明

取材・文=山本太郎
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【確認待ち】マイケル・ジャクソンも悩んだ皮膚病「尋常性白斑」~治療新時代が到来の画像1マイケルも悩まされた皮膚病「白斑(尋常性白斑)」(depositphotos.com)

 皮膚の色が抜け落ち、白くなってしまう病気、白斑(尋常性白斑)。マイケル・ジャクソンもこの病気だったことが公表されている。マイケルの肌がしだいに白くなっていったのは、皮膚の一部の色が抜け落ち、まだらになっているのをメークで塗り隠していたからだ。

 めずらしい病気と思われがちだが、実は人種を問わず、おおよそ100人に1人程度に起こるともいわれる。従来は難治とされてきたが、近年、治療が進化し、成果を上げている。最先端の治療に取り組み、「8割以上の白斑は改善可能と考えている」という新宿皮フ科院長の榎並寿男医師に聞いた。今回はその前編である。

皮膚に白い斑点やまだらもようができてしまう

──白斑はどういう病気なのですか?

マイケル・ジャクソンも悩んだ皮膚病「尋常性白斑」~治療新時代が到来の画像2マイケルも悩まされた皮膚病「尋常性白斑」

榎並寿男氏(以下、榎並) 皮膚の色素が一部、もしくは広範囲にわたって抜け落ち、白い斑点や斑紋(まだらのもよう)が現れる皮膚病です。医学的には「尋常性白斑」といいますが、昔から俗に「白なまず」とも呼ばれてきました。

 白斑は主に2つのタイプに分類されます。「汎発型」は最も多いタイプで、体中いたるところに白斑が現れます。「分節型」は体の右半分だけ・左半分だけといった局所に白斑が現れるタイプです。

 分節型は、ある神経の通り道に沿って白斑が出ることが比較的多いです。汎発型に比べて、主な治療法である光線療法で治りにくいタイプです。

 ほかに「限局型」という分類もありますが、これは体のごく一部に局所的に白斑が現れるタイプで、ほとんどは後に汎発型、1割ほどが分節型に移行します。

──どのくらいの頻度で起こる病気なのですか?

榎並 白斑は決して珍しい病気ではありません。発症頻度に関してはいくつかの研究報告がありますが、おおよそ人口の1%程度に起こるとされています。日本人を含むアジア人では少し頻度が高くなるとの報告もあります。

 また、性別や人種によって発症頻度の大きな差はないのですが、もともと皮膚の色が薄い白人では、白斑になっても目立たない傾向があります。一方、皮膚の色が濃い黒人や黄色人種では目立ちやすいわけです。

根本原因はいまだにわかっていない

──白斑の起こる原因は?

榎並 発症を引き起こす根本原因はいまだに解明されておらず、難治性の病気とされています。ただ、皮膚の色が抜け落ちるメカニズム自体はそう難しいものではありません。

 表皮(皮膚のいちばん外側の部分)の基底層に一定の割合で存在する「メラノサイト(色素細胞)」がなんらかの理由で破壊されたり、機能を失ったりして、色素メラニンをつくれなくなり、その部分の皮膚が外側からは白く見えるようになるのです。

 メラニンはシミの原因として知られるために悪者と思われがちですが、本来、紫外線の影響から皮膚を守る役割を担っています。なお、メラノサイトの数は人種による差はなく、皮膚の色はメラノサイトから産生されるメラニンの量の違いによります。

 白斑の発症には遺伝的要因が関与していると考えられており、原因に関しては「自己免疫疾患」説が有力視されています。

 たとえば、小さな切り傷、やけど、紫外線によるダメージなど、なんらかのきっかけでメラノサイトが傷つけられたとき、免疫細胞がこれを「異物」と見なして、排除しようと攻撃することがある。それだけで済んだら問題ないのですが、免疫細胞が今度は正常なメラノサイトまで攻撃するようになってしまうという説です。

──治療が難しい病気だと聞くのですが

榎並 痛みやかゆみなどの肉体的苦痛が伴うわけではありませんが、外見が損なわれるため、患者さんにとっては、心の痛む病気です。それなのに、従来はあまり有効な治療法がなく、病院へ行っても「治す方法はありません」と門前払い同然の扱いを受けることも少なくなかったと思います。しかし近年、白斑の治療は進歩を遂げ、かなり高い率で改善できるようになってきました。

 まず、21世紀に入ってから、紫外線を活用して色素再生を促す「光線療法」が格段に進化、多様化しています。さらに、従来は大がかりで患者さんの負担が大きいわりに効果が今ひとつだった「皮膚移植手術」も進化しました。

 こうした治療の発展により、当院では白斑の患者さんに「3カ月で80%の色素再生」を治療マニフェスト(公約)として掲げ、そのとおりに良い結果を得ています。白斑を治せる時代になってきたことを知っていただきたいと思います。
(取材・文=山本太郎)

榎並寿男氏(えなみ・ひさお)
1947年、岡山県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業、同大学院修了。1979年より中部地方を中心にクリニックを開く。光線療法に関する研鑽に努め、2006年に東京・市ヶ谷に国内初の白斑専門治療院「市ヶ谷皮膚科 日本白斑センター」を開設。2008年に東京・新宿に移転し「新宿皮フ科 日本白斑センター」と改称。白斑治療に関して国内屈指の実績を持つ。著書に『白斑はここまで治る』『白斑はここまで治るⅡ』(ともにアールズ出版)がある。

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