アスクルはアマゾンに勝つ…なぜ後発のロハコは成功したのか?

流通業におけるEC(エレクトロニック・コマース:電子商取引)が拡大している。代表格は米アマゾン・ドット・コムで、米EC市場の43%以上を占め、世界中でなお拡大を続ける。このままでは、EC市場はもとより、あらゆる業界がアマゾンに飲み込まれてしまうのではないかと危惧する声が聞こえてくる。
だが、EC市場は世界中でアマゾン一強に染まるかといえば、そんなことはない。実際、国内のB2B市場において、EC最大手はアスクルだ。アスクルは、いかにアマゾンと闘うのか。また、次なる成長戦略を描くのか。創業時から社長を務める岩田彰一郎氏に、その戦略を聞いた。
倉庫火災からの復活
片山修(以下、片山) 2017年2月、埼玉県・三芳町の「アスクル・ロジパーク・首都圏」で火災が発生し、鎮火に12日を要する惨事となりました。残念だったのは、13年に稼働したばかりの最新鋭にして最大の物流拠点で、火災が起きてしまったことです。振り返って、いかがですか。
岩田氏(以下、岩田) 「アスクル・ロジパーク・首都圏」を構えた三芳町は、自然が豊かで、貴重な蝶や植物の原産種がある地域です。それらを守る取り組みを始めようとした矢先でした。あまりにも大きなことが突然に起こって、次々と事態が変わりましたから、大変とか苦しいと思う間もなく、とにかく必死でした。
出火場所は、外部委託した箇所で火の気のない所と、想定外だった。しかし、社員には、すぐに「自分たちは被害者ではない、周囲の方を含めて社会に対する加害者である」と伝え、私も翌日から現地に張り込みました。
周辺地域を歩き、お話を聞くなかで、「俺たちは350年、この場所で農業をやっている」という方のお話を聞きました。確かに、その辺りは元禄時代に開墾された「三富新田」と呼ばれる由緒ある地域で、当時からの田や付き合いが残っている地域なんです。その地域に、受け入れていただいていたことを実感しました。町長さん、町役場のみなさん、地域の区長さんらに支えられましたし、地元の「イムス三宝総合病院」の院長さんは、お会いするとすぐに「住民の検診を手伝うよ」と言ってくださいました。
鎮火した後の3月7日、近隣説明会を行いましたが、怒声は一切なく、1時間で終了しました。むしろ、「ちゃんと再建しよう」「アマゾンに負けないようにがんばれ」という応援メッセージまでいただいたんです。改めて、地域とのつながりや、いかに貢献するかという意識が深まりました。