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カルビー・ショック…販売不振で減益、創業家に莫大な利益をもたらした会長が突然退任

文=編集部
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カルビー・ショック…販売不振で減益、創業家に莫大な利益をもたらした会長が突然退任の画像1松本晃会長兼CEO(左)と伊藤秀二社長兼COO(「カルビー HP」より)

 プロ経営者は経営改革の請負人である。企業の変革を託されて社外から招かれ、経営トップになる人をいう。プロ経営者に期待されるのは、経営改革を断行し業績を上げること。すなわち、結果を出すことに尽きる。

 プロ経営者、カルビーの松本晃会長兼最高経営責任者(CEO)が6月下旬の株主総会後に退任する。

 松本氏のプロ経営者としての実績は申し分ない。伊藤忠商事の出身で、商社マンから医療機器メーカー、米ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人の社長を経て2009年、カルビーの会長兼CEOに就いた。カルビー創業者である松尾孝氏の三男で3代目社長の松尾雅彦氏から、三顧の礼をもって経営トップに迎えられた。

 カルビーの非常勤取締役だった松本氏は、暗礁に乗り上げていた米ペプシコとの資本・業務提携交渉を全面的に任され、短期間のうちにカルビーに有利なかたちでまとめ上げた。その鮮やかな手腕に舌を巻いた松尾氏が、松本氏を経営トップに招聘したという経緯がある。

 経営改革を託された松本氏は、「悪しき文化をぶっこわす」と、ぬるま湯体質だったカルビーの社風を変えた。財務体質の改善が急務だったため、徹底したコスト削減を実施。その分を商品の値下げの原資とし、国内スナック市場で販売を伸ばしていった。販売増に伴って工場稼働率が大幅に改善した。

 11年3月11日、東日本大震災の発生当日、カルビーは東証第1部に上場した。その後、カルビーは快進撃を続け、その手法は“松本マジック”と呼ばれた。その最たるものは、営業利益率の改善である。松本氏が経営トップに就任した09年3月期に1.5%にすぎなかった営業利益率は、17年3月期には11.4%となった。

正念場を迎えているカルビー

 ただ、現在は業績の踊り場を迎えている。18年3月期の売り上げは前期比1.4%増の2560億円、営業利益は同4.7%減の275億円の見込み。北海道などの天候不順で主原料のじゃがいもを確保できなかったことにより、稼ぎ頭のポテトチップスの生産が停滞した「ポテチショック」と、北米での販売不振が重なり、営業利益は松本氏が社長就任以降初めての減益となる。

「目標必達」としてきた松本氏は、減益となるのを機にケジメをつけたとの見方も広がっている。地位にしがみつかないところがプロ経営者のプライドといえる。退任を発表する会見で「もともと、長くやるつもりはなかった。4年程度で退任するつもりだった」と述べている。

 松本氏を招いた松尾氏が2月12日に76歳で亡くなった。それもあって、プロ経営者としての自分の役目は終わったと判断したようだ。退任会見で「声をかけてもらって一緒にやってきた松尾さんがいなくなって、自分も潮時だ」と語っている。

 松尾氏から託された最大のミッションはカルビーの株式上場だったが、大成功を収めた。上場4年で株式時価総額は11倍超に大化けした。この株価の高騰は創業家に莫大な富をもたらした。

 創業家の株主信託組織である一般社団法人幹の会は上場時、発行済み株式の22.9%を保有する筆頭株主だったが、17年9月末時点の保有比率は17.0%で第2位の株主だ。

「幹の会は、保有株の一部を信託契約に基づき解約、市場で売却して現金を手にしたものと思われる」(市場関係者)

 松尾氏が進めたのが、脱創業家、外資提携、プロ経営者招聘、株式上場だったのだ。

 プロ経営者は、業績が低迷している企業を経営改革でV字回復させることが仕事であり、それが醍醐味でもある。カルビーでの成功を勲章に、松本氏は次の活躍の場を求めることになるとみられる。

 松尾氏が亡くなり、松本氏が去ったカルビーは、新たなステージを迎える。最大の課題は、20.0%の株式を保有する筆頭株主、ペプシコとの関係だ。09年に結んだ契約の特別条項が19年7月に終了する。そうなれば、ペプシコは出資比率を変えられるようになる。ペプシコが3分の1以上の株式を保有してカルビーを傘下に収めることも考えられる。

 だが、交渉の達人である松本氏はいない。カルビーがどう動くのか、注目したい。

伊藤社長がCEOを兼務

 カルビーは4月23日、6月20日付で伊藤秀二社長兼最高執行責任者(COO)が社長兼CEOに就くと発表した。松本氏は同日付で現職を退任し、講演活動などを通じてグループの情報を対外発信する「シニアチェアマン」に就く。伊藤氏に権限を集中させ、単独でカルビーを率いる体制になる。COO職は空席となる。

 松本氏が就くシニアチェアマンは経営に関与せず、企業の社会的責任(CSR)活動などをサポートする。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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