水面下で合併交渉は進展か

 日産の取締役会の議長はゴーン氏だ。CEO職は西川氏に譲ったが、現在でもゴーン氏が事実上のトップである。

 取締役は9人いる。ゴーン氏、グレッグ・ケリー氏(代表取締役)、元ルノー役員のジャンバプティステ・ドゥザン氏とベルナール・レイ氏の4人は仏政府の考え方に同意するだろう。日産サイドは社長の西川氏、副社長の坂本秀行氏、前副社長(生産事業)の坂本秀行氏、愛知機械工業会長の松元史明、TCSX(トータル カスタマー サティスファクション本部)の中村公泰氏、そして志賀俊之氏の5人だ。数の上では日産サイドが5人で過半数を占めるが、志賀氏は05年に日産のCOOに就き、13年に副会長。その後、15年に産業革新機構の会長。日産を“卒業”したはずなのに、なぜか取締役として残り続けている。そのため、「志賀はゴーンの隠れ“切り札”なのかもしれない」(日産の元役員)と勘ぐる向きもある。

 西川氏の人望のなさは致命的だ。ゴーン氏の「日産リバイバル・プラン」を実践し、社内や部品メーカーに対して熾烈なコスト削減を要求した。その功績で03年に常務執行役員に昇格し、“ゴーン命”で社長兼CEOにまで昇り詰めた。社内外に西川シンパはいないと評判になっている。しかも、西川氏と志賀氏は犬猿の仲である。

 ルノー・日産の合併(経営統合)が本格的に議論される過程で日産の取締役会の構成がルノー4:日産5から、ルノー5:日産4に変更され、しかも日産サイドに隠れゴーン派が残っていたりしたら目も当てられない。

 メインバンクはみずほ銀行、取引金融機関は三井住友銀行、三菱UFJ銀行、三井住友信託銀行、日本政策投資銀行と続く。みずほ銀行に「日産を仏政府に献上する」ことに「ノー」を言う力はなさそうだ。

 経済産業省もダメである。世耕弘成大臣は自動車業界とのパイプはまったくない。トヨタ自動車が何か言うかだけだろう。日本の自動車業界のリーダーとして社長の豊田章男が「日産が仏政府系の企業になる」ことに「否(ノン)」と言えるかどうか。トヨタにとっても、日産がフランスの企業になることのメリットはないはずだ。

 3月29日、ブルームバーグは「仏ルノーと日産自動車は合併し、統合後の新会社を上場する可能性について協議している」と報じた。さらに、「カルロス・ゴーン氏が交渉を推進しており、統合後の新会社を率いる見通し」「基本的にルノーの株主が新会社の株式を受け取る」と具体的な動きが進んでいることを示唆している。

 このブルームバーグの報道は、読売新聞でわずかに報じた以外、日本ではほとんど伝わらなかった。それは日産で渉外・広報を担当する役員が火消しに回ったからだといわれている。

 仮に、このブルームバーグの報道が「事実無根」であるなら、日産は全面否定のコメントを出すはずだが、今のところそれもしていない。日産は、会社の存亡にかかわる問題なのに完全に腰が引けている状態だ。そのため、ゴーン・西川両氏の間に密約でもあるのかとみる向きも強い。

 この春、「ゴーン氏は経営統合を進めることを条件に、ルノーのCEO続投をマクロン大統領に認めてもらった」との怪情報がフランス国内で盛んに流れていた。
(文=編集部)

【追記】
 カルロス・ゴーン氏は2017年度分として、日産自動車、仏ルノー、三菱自動車工業の3社合計で19億円強の役員報酬を得た。

 日産の6月26日の株主総会でゴーン自身が、役員報酬が前年度比33%減の7億3000万円だったと説明した。10億円を下回るのは4年ぶり。17年4月に社長兼最高経営責任者(CEO)を退き、会長になったことが減額の理由とみられる。

 しかし、ルノーの役員報酬は740万ユーロ(約9億5000万円)。三菱自動車は2億2700万円だった。3社合計で19億700万円に上る。日本にほとんどいないにもかかわらず、日産は7億3000万円も支払う。そのため、「実質的に最高なのではないか」(自動車担当アナリスト)と揶揄する声もある。

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