海運最大手、日本郵船の2018年4~6月期連結決算の売上高は前年同期比10.9%減の4648億円、営業損益は81億円の赤字(前年同期は35億円の黒字)、経常損益は66億円の赤字(同102億円の黒字)、最終損益も45億円の赤字(同53億円の黒字)に転落した。
子会社の日本貨物航空(NCA)が国土交通省から事業改善命令を受けて、保有する機体の大半の運航を停止している。さらに、定期コンテナ事業を持分法適用会社、オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)へ分割したことによる事業終了コストが、想定よりも膨らんだことによるダブルパンチで郵船本体の収益が悪化した。
19年3月期通期業績予想も下方修正した。売上高は前期比19.2%減の1兆7650億円(従来予想は1兆8050億円)、経常利益は同64.3%減の100億円の見込み(同42.8%増の400億円)。最終損益も同40.5%減の120億円で、43.8%増の290億円としていた従来予想から一転して減益となる。
日本郵船の傘下で貨物専業の日本貨物航空は7月20日、国交省から事業改善命令を受けた。16年12月以降に発覚した航空法違反に当たる不適切整備9件、整備記録の改ざん・隠蔽2件が処分の対象となった。不適切整備のうち航空事故に該当する2件では、国交省への報告の遅れもあった。
国交省は事業改善に合わせ、航空機が飛行するために必要な検査を毎年受けずに済む「連続式耐空証明」を取り消した。毎年の検査が免除される「特権」が剥奪されたことになる。日本の航空業界で初めての処分で、衝撃は大きかった。
今後は毎年、保有する貨物専用機11機すべてについて検査を受けなければならない。耐空証明取得のための検査には、航空機1機につき年間1週間程度の運休が必要だ。再び連続式耐空証明を取得するには、数年かかるとされる。1機ずつ検査すると、11機合計で年80日近く運休が出ることになる。
NCA機は17年3月と18年3月、鳥との衝突などで機体が損傷していたことが5月に発覚。損傷の程度が大きく、国交省は航空事故と認定した。
NCAに立ち入り検査した結果、航空機の整備記録で事実と異なる記載をしていたとして、6月中旬に全11機の運航を停止して調査を始めた。調査には数カ月以上かかるとされる。7月末時点で2機しか運航できていない。
NCAは他社から機体をチャーターするなどの対応をしているが、運航休止が長引けば顧客離れは避けられない。