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米山秀隆「不動産の真実」

リバースモーゲージ型住宅ローンの利用者が急増している理由

文=米山秀隆/富士通総研経済研究所主席研究員

 一方、生活資金を確保しようとする(2)の場合は、リース料が買い取り価格の8%(年間)とすると、12年半で家賃の総支払額が買い取り価格を上回る計算となり、自宅売却しても、必ずしも生涯にわたって住むための資金を確保できるわけではない。また、前述のようにリースが打ち切られるリスクもある。リースバックは、リバースモーゲージのように最後に売るわけではなく最初に売る仕組みであるために、買主はリバースモーゲージで負うようなリスクを負わず、逆に売主は住み続けることのできないリスクなどを負うことになる。

 リースバックの仕組みは、例えば、バブル期に高値でマイホームを購入した層が、ローンを払いきれなくなった場合でも競売や任意売却を避けて住み続け、買い戻せるオプションもついているという点で魅力のあるものとなっている。事業者にとっては市場価値以下で価値のある物件を手に入れることのできるメリットがあり、仮に購入金額を全額借り入れで賄ったとしても、金利以上のリース料が得られれば、十分採算がとれることになる。

 自宅の資産価値を生前に最大限現金化するリバースモーゲージとは異なるが、売主にとっては競売や任意売却に比べれば高く売れ、しかも住み続けることができるため、一定の需要が発生していると考えられる。特殊な需要向けの商品であり、老後資金を得るには不向きであるが、自宅を現金化する一つの方法となっている。得られるキャッシュフローという点では、リースバックはリバースモーゲージに比べれば不利であるため、ローン破綻の可能性などがあり、どうしても自宅を手放したい場合に使われる手法であるといえる。

リバースモーゲージ型住宅ローン

 一方、自宅を担保にお金を借りる手法として、近年利用が伸びている商品が、住宅金融支援機構が2009年度に始めたリバースモーゲージ型住宅ローン(「リ・バース60」)である。2017年度の利用申請件数は2016年度の4.5倍の174件(うち利用実績は68件)に達し、今年度に入ってからも伸びている。満60歳以上が対象で、毎月の支払いは利息のみで、元本は死亡時に物件を売却することで一括返済する。住宅金融支援機構は民間金融機関がこの商品を販売する際、住宅融資保険を付与することでサポートする。

 当初は資金の使途をリフォームに限定していたが、その後、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金、新築住宅の購入や建設資金にも広げ、昨年からは担保価値が融資額を下回っても相続人の返済義務が生じない「ノンリコース型」が投入された。

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

米山秀隆/住宅・土地アナリスト

1986年筑波大学第三学群社会工学類卒業。1989年同大学大学院経営・政策科学研究科修了。野村総合研究所、富士総合研究所、富士通総研等の研究員を歴任。2016~2017年総務省統計局「住宅・土地統計調査に関する研究会」メンバー。専門は住宅・土地政策、日本経済。主な著書に、『世界の空き家対策』(編著、学芸出版社、2018年)、『捨てられる土地と家』(ウェッジ、2018年)、『縮小まちづくり』(時事通信社、2018年)、『空き家対策の実務』(共編著、有斐閣、2016年)、『限界マンション』(日本経済新聞出版社、2015年)、『空き家急増の真実』(日本経済新聞出版社、2012年)など。
米山秀隆オフィシャルサイト

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