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高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

経営逼迫の電機メーカー2社、破綻回避への動きが最終局面…市場が注視

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

 ちなみにもうひとつの事業の柱だったプリント基板事業については、同品生産子会社のエルナープリンテッドサーキット(滋賀県長浜市)にいったん自身のプリント基板事業を集約、同社を台湾の電子基板および精密加工メーカー、GLOBAL BRANDS MANUFACTURE LIMITEDとの合弁事業に切り替えるかたちで(3割の出資は残している)、事実上売却している。プリント基板事業の売却は同事業においては太陽誘電とのシナジー構築が図れないという事情もあったのだろう。

意外なスポンサー登場となった田淵電機

 もう1社は本連載で8月にも採り上げた田淵電機である。資金ショートして、今年6月25日に事業再生ADRを申請して再建を目指していた田淵電機がスポンサー契約で合意したのは、ダイヤモンド電機だった。

 田淵電機の筆頭株主はTDKで、同社の出方が注目されたが、予想外のスポンサー登場となった。詳細は本稿執筆時点ではまだ詰めている段階だが、両社は9月25日付で「スポンサー契約」で基本合意しており、19年1月にダイヤモンド電機が田淵電機に出資する予定。

 折しもダイヤモンド電機は持株会社制度への移行を決めており、9月26日付で上場を廃止、10月1日から持株会社の「ダイヤモンドエレクトリックホールディングス」が上場している。出資比率にもよるが、過半を超える出資となれば、持株会社のダイヤモンドエレクトリックホールディングスの下に事業会社の田淵電機とダイヤモンド電機が並ぶというスキームが誕生する。

 田淵電機とダイヤモンド電機はこれまでほぼ取引関係はなかった(過去に単発であっただけ)。また両社は製品市場も異なる。ただ、ダイヤモンド電機の主力製品である自動車用点火コイルは、電圧制御の技術を活用しており、技術的には田淵電機の電源装置と近い。また田淵電機が手がける太陽光発電用パワーコンディショナについても、ダイヤモンド電機でも同様の製品はあり、太陽光向けは後発ながらコンバータなどの事業に注力している。こうしたなかでダイヤモンド電機としてはシナジーの創出が可能と判断した。

 田淵電機は今年6月に事業再生ADRを申請して金融負債のみをいったん棚上げして再建を目指しているものの、今19年3月期第1四半期(4~6月)も、売上高が前年同期比18.3%減の58億2400万円にとどまり、利益も最終の当期純利益は7億4300万円の赤字となるなど改善がみられていない。6月末時点での財務も、総資産218億800万円に対して、純資産は4億3900万円にまで減少しており、自己資本比率は2.0%にまで低下している。

 ダイヤモンド電機の出資比率および出資額が現段階でははっきりしないが、業務面での改善にはまだ時間がかかりそうで、ADRの受け入れとは別に金融機関の追加支援も必要とみられる。田淵電機の再建への道のりは、まだ始まったばかりである。
(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

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