6月19日に東証マザーズへ上場したフリマアプリのメルカリ株が、低空飛行を続けている。10月25日に公開価格(3000円)を下回り、2856円(前日比224円安)の上場来安値を更新した。新興市場で取り沙汰されていた公開価格割れが現実のものとなった。
公開価格を下回れば、IPO(新規上場)後に同社株を買ったすべての株主が含み損を抱えることになる。IPO直後が上場来高値で、その後は株価が下がり続ける「上場ゴール」との批判が出かねない状況となった。
「米国とスマホ決済への投資拡大で当面黒字化が見通せず、とても手が出せない」(新興市場に強い中堅証券会社のアナリスト)との警戒感が台頭し、これが株価崩落につながった。
メルカリは鳴り物入りで上場した。米国では企業価値が10億ドル(約1100億円)以上の未上場ベンチャー企業を、伝説の生き物にたとえて「ユニコーン」(一角獣)と呼ぶ。ユニコーン銘柄のメルカリの人気は高く、公募価格3000円に対し、上場初日に公開価格の2倍の6000円まで上昇し、これが上場来高値である。
8月9日、上場後初めて発表された2018年6月期連結決算の最終損益が70億円の赤字(前年同期は42億円の赤字)と、赤字幅が拡大したことから株価が急落した。その後、8月24日まで5営業日続落し、連日、上場来安値をつけた。
創業者の山田進太郎会長兼最高経営責任者(CEO)は、「現在は短期的な利益を追う段階ではない」と投資家に理解を求めたが、理解が広がったとはいいがたい。売上高は前年同期比62%増の357億円、営業損益は44億円の赤字(同27億円の赤字)だった。国内のフリマアプリ事業の利用者は増えたものの、米国での事業拡大に伴う先行投資が重荷となった。
アナリスト向け説明会で、自信満々の経営陣はビジネスモデルや長期的な成長戦略を中心に語り、足元の業績や今期の見通しなどは後回しにした。IR資料でも、決算数字より人材の確保の推移を先に掲載するなど、「“いいとこ取り”の説明だった」(前出のアナリスト)という。
この結果、メルカリの先行きを一層、警戒する投資家が増え、機関投資家のなかには持ち株を処分するところもあったようだ。