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上昌広「絶望の医療 希望の医療」

関空、成田空港を外国人受入数で逆転か…地方衰退で首都圏一極集中との認識は間違い

文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長
関空、成田空港を外国人受入数で逆転か…地方衰退で首都圏一極集中との認識は間違いの画像1ラジオ大阪にて『Dr.masaのセルフケア最前線!』の録音光景。右が岡本医師で、左が小林秀美氏だ。

 7月23日、我々はNPO法人医療ガバナンス研究所の大阪事務所を開設した。大阪出身のスタッフである小林秀美氏が担当する。

 東日本大震災以降、福島や仙台の医療機関と連携しているようなかたちで、関西でも活動したいと考えている。早速、東大阪市で岡本医院を経営する岡本雅之医師とのコラボが決まった。岡本医師は、古きよき大阪を体現した人物である。筆者にとっては、母校である灘高校の先輩にあたる。これまで数々のご支援を頂いてきた。

 たとえば、東日本大震災後に我々のチームは浜通りで活動を開始したが、その際には「君たちはカネのことは考えないでいい。困ったら、こちらに言っておいで」と言われた。多くの資金を援助していただいた。また、地元の相馬高校が灘高校と交流した際にも、まったく同じ言葉を言われた。灘高校の教員に伝えたため、その後の展開は知らないが、岡本医師なしでは両校の交流は続かなかっただろう。

関空、成田空港を外国人受入数で逆転か…地方衰退で首都圏一極集中との認識は間違いの画像2

 写真はラジオ大阪で撮影したものだ。向かって右が岡本医師で、左が小林秀美氏だ。岡本医師は番組枠を買い取り、『Dr.masaのセルフケア最前線!』というコーナーに出演している。そして、このコーナーを通じて、多くの若手医師に活躍の場を提供している。

 昨今の医療界は、製薬企業との癒着、研究不正、不正入試など不祥事が相次いでいる。彼らに共通するのは、カネに汚く、権威に依存することだ。岡本医師と正反対だ。日本の社会にとって、どちらが必要かは言うまでもない。我々は、岡本医師のような志の高い人と付き合い、自らを成長させたいと思う。

 実は、日本にはこのような医師が大勢いる。我々のグループは、岡本医師以外に、オレンジホームケアクリニック(福井市)、遠隔画像診断のエムネス(広島市)などとも協業している。不思議なことに、協業するのは西日本の施設が多い。筆者が関西出身ということもあるだろうが、この地域が成長しつつあるからだ。元気な医師が多い。

 マスコミは、「地方都市は衰退し、首都圏一極集中が進んでいる。政府はなんとかせよ」という論陣を張るが、私は賛同できない。そもそも、そういう前提自体が間違っている。

凄まじい沖縄の地価上昇

 たとえば、7月に国税庁から公開された路線価だ。対前年比の伸びは高い順に沖縄(5.0%)、東京(4.0%)、宮城(3.7%)、福岡(2.6%)、京都(2.2%)、広島(1.5%)、大阪(1.4%)と続く。千葉、埼玉、神奈川は0.6~0.7%だ。

 東京の上昇率は高いが、首都圏はそうでもない。むしろ、西日本の中核都市での上昇が目立つ。特に沖縄は凄まじい。外国人観光客の増加が原因だろう。2017年の観光客は939万人。ハワイの938万人を抜いた。ハワイの観光客は対前年比で5%増加したが、沖縄は9%だった。

 沖縄に限らず、わが国を訪れる外国人旅行者の数は増加している。旅行客は、どこから入国しているのだろう。

 2017年に受け入れ数が多かったのは、成田空港764万人、関西空港716万人、羽田空港375万人、福岡空港221万人、那覇空港163万人と続く。

 注目すべきは対前年の増加率だ。高い順に福岡空港35%、那覇空港20%、関西空港18%、羽田空港15%、成田空港12%となる。このペースが続けば、成田空港は2019年に関西空港に、2024年に福岡空港に抜かれる。

 これはあり得ない話ではない。船旅では、すでにこの傾向が顕著だ。2017年の海外からのクルーズ船の寄港回数は多い順に、博多326回、長崎267回、那覇224回だ。横浜は178回、神戸は117回にすぎない。

 このような事実を知ると、東京対地方というより、東京と西日本の一部都市は活気があるというほうが妥当であることがわかる。

アジアの地政学的な変化

 歴史的に見れば、わが国は平常な状態に戻りつつあるのかもしれない。東アジアの歴史をひもとけば、中国がその中心にありつづけた。大和王朝の昔から明治政府まで、中国からの先進技術を受け入れやすい西日本の政治勢力が日本を統べてきた。

 例外は阿片戦争(1840-42)以降の近代だ。中国は列強の植民地と化した。この時期にわが国は近代化を進めた。1921年の日英同盟破棄から1945年の敗戦までを除き、長い間、英米と同盟関係を結んできた。英米と付き合う上では、東日本も西日本も地理的な条件は平等だ。この間、首都である東京へのストロー効果で一極集中が進んだ。

 ところが、状況は変わってしまった。中国をはじめとしたアジア諸国が躍進したからだ。大陸へのストロー効果が加速する可能性が高い。近年の西日本の都市の発展の原因だろう。

「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/7月28日号)は、全国の銀行をランク付けした。トップは徳島銀行、ついで佐賀銀行。トップ10のうち7行が九州、四国、中国地方だ。一方、ワーストは栃木銀行、ついで福島銀行だ。ワースト10のうち7行が関東と東北地方の銀行だ。すでに変化は顕在化している。

 東京対地方という枠組で日本の地域医療を考えてはならない。アジアの地政学的な変化を踏まえた、個別具体的な議論が欠かせない。
(文=上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長)

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

上昌広/特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長

1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
医療ガバナンス研究所

Twitter:@KamiMasahiro

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