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日本企業、時間の7割を社内向け業務に浪費…3カ月で50%生産性が向上した企業

文=編集部
日本企業、時間の7割を社内向け業務に浪費…3カ月で50%生産性が向上した企業の画像1「Getty Images」より

「日本の企業は、社内向けに業務時間の7割を費やしている」という衝撃の実測数値を明らかにしたのは、アイ&カンパニー・ジャパン代表で経営コンサルタントの入江仁之氏だ。

 入江氏は世界最大のネットワークシステム会社、シスコ米国シリコンバレー本社の戦略担当部門マネージングディレクターとしてグローバルに活動し、現在は経営コンサルタントとして活躍。主なクライアントは、トヨタ自動車、日立製作所、ゼネラル・エレクトリック(GE)、NTTをはじめとして、IT、ハイテク、消費財など日米の各業界を代表する企業だ。そんな入江氏は日本の企業の現場を見ていくなかで、ある事実に気がついたという。

「以前から私は、どうして日本の生産性が低いのかという問題に関心がありました。OECD(経済協力開発機構)の『Productivity statistics(生産性統計)』によれば、日本の生産性はアメリカの6割の水準に低迷しています。主要先進7カ国中では最下位です。これまで私は日本の経営を、特に失敗を重ねている日本の企業の荒廃した現場を、何百と観察してきました。そのなかで、社員の生産性が低い原因は、社員が置かれている環境、つまり組織風土の問題ではないかという考えにいたりました」

 その考えにいたったのは、「PMQIR」という付加価値ベンチマーキングを用いたときに日本企業の独特のある数値が目に見えるようになったからだ。

「PMQIR」はP:準備(Preparation)、M:移動(Move)、Q:作業待ち(Queue)、I:検査(Inspection)、R:作業の重複(Redundant)の頭文字からなり、ムダな業務カテゴリーをなくすための「次世代生産性向上方法論」だ。PMQIRは、顧客価値の視点からすべての業務の労働時間を対象にして分類する。なお、分類する際には、重視すべきC:顧客から見て、その業務処理費用を負担してでも、遂行してほしい顧客付加価値(Customer Value Added)とB:法規制や社会責任上、その業務遂行が必須の事業付加価値(Business Value Added)も含めて分類する。

「日常の行動を『顧客価値を生む行動』(CとB)と『顧客価値を生まない行動』(PMQIR)の2つに分類して、価値を生む行動を優先する判断をしていきます。たとえば、ある設備・部品の販売会社を分析した際には、C(顧客付加価値)とB(事業付加価値)の追求に対しては業務時間全体の3割しか使われていませんでした。大半の時間はP(準備)とM(移動)に費やされていることがわかったのです。さらに、その内訳を見るために、業務形態分類を行いました。業務形態とは『共同作業、人材召集、通知、資料共有、情報収集、その他』です。そこでわかったのは、P(準備)は情報収集が多くを占め、社内向けの書類作成に業務時間の7割を費やしていました。これでは、新規顧客開拓の時間をとれません。さらに顧客から問い合わせがあった際も社内承認など社内手続に時間が忙殺されるなど、顧客重視の体制になっていなかったのです」

 この組織はトップダウンのノルマによる管理統制が中心で、業績不振が続き、トップはますます営業部門への管理を強めようとしている、極めて“日本的”な会社だった。社内はますますトップへの忖度と調整に注力するようになる。本来は顧客価値を生むべき時間を社内調整に向けられているのだ。

「そこで、私はCの顧客価値を増やす組織風土改革を提案しました。個々人が主体的に考え行動する組織『自律分散組織』への組織改革とともに、営業担当者の意識改革に力点を置きました。その結果として、3カ月で付加価値率が25%から37%へと12ポイントも上昇しました。総人員約700人の約20%、140人もの人員を動かして新規事業に取り組むことができたのです」

 最近の数十組織の実績は、中央値で23%の生産性向上を、大きいところで50%以上の生産性向上を約3カ月で実現しているという。継続して取り組み、10年間で生産性が10倍以上になっている企業も出てきているのだ。

すぐにできる!生産性向上の改革法

 そこで入江氏に、すぐにでもできる生産性向上の改革法を教えてもらった。

「ムダなP(準備)の代表的な例は、社内の情報共有のための会議資料の作成準備です。これまでの私たちの経験では、会議は(1)組織のメンバーの信頼関係をつくることを目的としたチームビルディングの会議、(2)報告や情報の共有をするための会議、(3)意思決定のための会議に分類できます。

(1)は会議ではなく、会社が主催する社員イベントなどの活動でメンバー相互の理解を深めるほうが有効です。(2)はITツールを使い必要なときに展開することが有効です。顧客価値や事業価値を生む会議は(3)のみです。これらは、そもそもその会議が顧客価値を生むかどうかを自ら考え、もし生まなければ、会議そのものを廃止すべきなのです」

 顧客価値を優先させるための詳しい改革の手法は、11月に上梓した『「すぐ決まる組織」のつくり方――OODAマネジメント』(入江仁之、フォレスト出版)において明らかにされている。まずは目の前の会議の見直しから始めてみたい。
(文=編集部)

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