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日産ゴーン逮捕、不正報酬分の50億円あれば社員8千人の解雇は不要だったとの指摘も

文=編集部
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日産ゴーン逮捕、不正報酬分の50億円あれば社員8千人の解雇は不要だったとの指摘もの画像1逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者(写真:ロイター/アフロ)

 日本はおろか世界にまで激震が広がった、日産自動車会長のカルロス・ゴーン容疑者逮捕の一報。かつて経営難を乗り越えたことで称賛を浴びたゴーン容疑者だが、強引な経営策に内外から不満の声が噴出していた点に改めて注目が集まっている。

 東京地検特捜部が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いでゴーン容疑者と同社代表取締役グレッグ・ケリー容疑者を逮捕したのは11月19日。日産は逮捕直後にニュースリリースを掲出し、内部調査による不正行為の判明や、これまで検察当局に情報提供・捜査の面で全面協力を行ってきたことを発表した。また、ゴーン容疑者、ケリー容疑者それぞれの役職解任を取締役会で提案すると明かした。

 ゴーン容疑者はフランスの自動車会社ルノーで役職を持つ傍ら、1999年に同社と日産の業務提携によって日産の最高執行責任者(COO)に就任。「日産リバイバル・プラン」を発表し、人員削減を含めたコスト削減を次々と断行して日産の業績を劇的に回復させた。

 経営の立て直しを評価される一方、“数字重視”の改革に疑問を唱える声も少なくない。自動車ジャーナリストの遠藤徹氏は、毎日新聞の取材に「彼が来てから国内販売網はズタズタにされ、売れそうな車種以外は切り捨てられた」と答えている。また、ゴーン容疑者は2014年3月期決算が予想を大きく下回った際、日本人トップの志賀俊之COOを事実上の更迭。17年9月に国土交通省から検査不備を指摘された際も、対応を西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)に丸投げした。自己保身に走り首尾よく立ち回る姿には、「責任逃れ」との指摘が相次いだ。

 ジャーナリストの井上久男氏はウェブメディア「現代ビジネス」で、ゴーン容疑者の逮捕について、日産とルノーの関係性に言及している。ルノーの筆頭株主であるフランス政府のエマニュエル・マクロン大統領は日産との経営統合に意欲を見せており、井上氏は「日産の西川CEOは、経営の独自性が維持できなくなるとして、これ以上ルノーの支配が強まることを嫌った」と指摘。このままルノーCEOでもあるゴーン容疑者とゴーン派のケリー容疑者が失脚すれば、西川社長が日産の取締役会で大きな権限を持つことになる。

 ゴーン容疑者らの逮捕直後に開いた会見で、西川社長は「クーデターではない」と強調した。しかし、今回の一件をめぐっては、強引な舵取りを見せたゴーン容疑者への不満の爆発や、今後の日産の経営を見定めた上での逮捕劇という見方が強い。強権者への不満と経営をめぐる利害関係が見え隠れしており、単純に“ゴーン容疑者らの不正”という言葉だけでは片づけられない様相を呈している。

「ゴーンの奇跡」のまやかし

 また、逮捕を転機に、かつては称賛された「ゴーン流改革」「ゴーンの奇跡」に対する懐疑的な見方も広がっている。

 ネット上では、「コストカッターとして冷酷な首切りをやりながら、自分は莫大な不正蓄財をやっていたのか」「そもそもゴーンのやったことは“日産版ショック・ドクトリン”にすぎない。経営陣と労組の争いに外から入ってきて、2万人のリストラと5つの工場閉鎖を断行したんだから」「『日産の業績を奇跡的にV字回復させた』と言われるけど、その陰に大勢の解雇者がいることに納得できない」という声があがっており、「もし松下幸之助が生きていたらなんて言うだろう?」と、業績が苦しいときでも従業員を解雇しない方針だった“経営の神様”と比較する声も見られる。

 また、横浜合同法律事務所はツイッターで19日に「2009年2月9日、カルロスゴーンの記者会見で、国内で約8000人もの非正規労働者が解雇されました。いわゆる『派遣切り』です。今もこの派遣切りの撤回を求めて、5人の原告が労働委員会でたたかっています。不正された50億円があれば、派遣切りはなかったのではないでしょうか。怒りしかありません」と投稿し、1400以上のリツイートを記録している。

過去3回、役員報酬トップに

 逮捕容疑では、ゴーン容疑者はケリー容疑者と共謀して、10年度から14年度の5年分の報酬を約50億円過小申告していたという。東京商工リサーチの調査によると、ゴーン容疑者は上場企業の1億円以上の役員報酬の開示制度が始まった10年3月期決算から9年連続で1億円以上の役員報酬を得ている。16年5月に日産の傘下に収めた三菱自動車工業からも、18年3月期に2億2700万円の役員報酬を受け取っている。18年3月期は2社合計で9億6200万円で、これは同年度の11位に相当する。

 累計額は過去9年で合計90億900万円(日産が9回で87億8200万円、三菱自が1回で2億2700万円)。過去最高は17年3月期の10億9800万円で、これは1億円以上の役員報酬を受け取った役員の歴代30位に該当するという。さらに、09年度(10年3月期)、10年度(11年3月期)、12年度(13年3月期)には年度別で役員報酬トップに立っている。

 かねて高額報酬に対する批判に反論してきたゴーン容疑者だが、その代償は大きそうだ。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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