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なんとルヴァンがリッツに逆転勝利…ヤマザキのプライド、沢口靖子のCM効果か

文=編集部
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なんとルヴァンがリッツに逆転勝利…ヤマザキのプライド、沢口靖子のCM効果かの画像1ルヴァン(「ヤマザキビスケット HP」より)

 かつて“アパレルの雄”と呼ばれた三陽商会は、バーバリーブランドを失ってから業績の低迷が続いている。2019年12月期の連結業績の見通しを下方修正した。売上高は650億円を30億円減の620億円、営業利益は20億円を15億円減の5億円に引き下げた。

 すでに18年12月期の連結業績の予想も下方修正している。売上高は630億円を25億円減の605億円に、営業利益は5000万円の黒字から16億円の赤字に転落する。最終損益は、自社保有の三陽商会青山ビルの売却益33億円を特別利益として計上するため、21億円の黒字(17年12月期は10億円の赤字)に転換する見込みだ。

 今年9月、250人の希望退職を募ると発表した。希望退職の対象は、営業や企画などの総合職で約1000人。3度目の大規模なリストラだ。13年6月に276人、16年10月に249人が退職している。

 三陽商会の転落は、バーバリーブランドを失ったことから始まった。

バーバリーを失い凋落

 三陽商会といえば、バーバリーだった。1965年の輸入開始以来、50年以上にわたって英バーバリー社と蜜月関係を築いてきた。2015年6月、ライセンス契約が切れ、その関係に終止符が打たれた。世界統一商品としてブランド管理のグリップを強めたいバーバリー社と、バーバリーの派生商品をつくる三陽商会との関係がぎくしゃくして、ライセンス契約が打ち切りになったとみられている。

 バーバリーといえば、コートの裏地などのチェック柄がトレードマークだ。重厚なデザインや仕様のため、年齢は高めの富裕層に支持されてきた。

 それが96年、日本で若者の間でバーバリーが爆発的にヒット。三陽商会は10代から20代の女性にターゲットを絞ったバーバリー・ブルーレーベルを発売し、これが大当たりした。

 97年10月。当時人気絶頂の歌手、安室奈美恵が婚約会見で着ていたのが、バーバリー・ブルーレーベルのチェックのミニスカートだった。約2万円の商品が、その翌日から飛ぶように売れた。三陽商会は売上高の25%をバーバリーブランドで稼いでいた。

 基幹ブランドを失った痛手は大きかった。バーバリーを扱っていた2014年12月期の連結決算の売上高は1109億円、純利益は63億円を上げていた。だが、18年12月期の売上高の見込みは605億円と、半分近い落ち込みだ。08年当時2000人を超えていた正社員は、3回のリストラで750人程度に減る。この10年間で6割強も減る勘定だ。

 バーバリーなき後、強気の中期5カ年計画を策定した。一時的に業績が落ち込んでも、18年12月期には売上高は1000億円、営業利益は50億円に回復するという計画を立てたが、この計画は絵に描いた餅にすぎなかった。

 バーバリーの後継として百貨店に出したマッキントッシュロンドンとブルーレーベルでバーバリーの穴埋めをする計算だったが、両ブランドとも不振で、まさに捕らぬ狸の皮算用となった。

 ライセンス契約していたバーバリーのブランドに頼り切り、百貨店市場の縮小とインターネット勢の台頭という構造変化にのみ込まれた格好だ。三陽商会は、いまだに浮上するきっかけを見つけ出していない。

 巻き返し策として、ネット通販と実店舗の連携強化や直営店の出店に向けて20年までに100億円超を投資する。人工知能(AI)を扱うベンチャー企業、ABEJA(アベジャ)と業務提携。店舗に設置したカメラの画像の分析で既存の顧客かどうかを判別し、購入履歴をもとに商品提案を行うといった、デジタル面での強化を図る。経費削減のために手控えていた広告宣伝も再開する。

 こうした積極策が実らなければ、経費だけが増え利益が出ない懸念もある。これらの巻き返し策がどのような効果をもたらすかに注目したい。

ナビスコブランドを失った山崎製パンは巻き返しに出る

 山崎製パンは子会社のヤマザキ・ナビスコが「ナビスコ」ブランドを保有する米モンデリーズ・インターナショナルと結んでいたライセンス契約を16年8月末で終了した。「オレオ」や「リッツ」などの4ブランドは9月からモンデリーズ社の日本法人が販売。ヤマザキ・ナビスコは9月1日付でヤマザキビスケットへと社名を変えた。

 1970年の提携から46年。米ナビスコ社のブランドを引き継いだモンデリーズ社と関係を解消したのはなぜか。

 山崎製パンの飯島延浩社長は提携解消の会見で、「下請けとして製造だけやってくれという内容だった」と悔しさをにじませた。下請けになり下がることは、製パン業界王者のプライドが許さなかった。かくして、モンデリーズ社との契約を打ち切ったのだ。

 ヤマザキ・ナビスコの2015年12月期の売上高は前期比10%増の402億円、営業利益は33%増の34億円と、ともに過去最高を記録した。親会社の山崎製パンの15年12月期の連結決算の売上高は前期比3%増の1兆272億円と、初めて1兆円を突破。営業利益は29%増の270億円。ヤマザキ・ナビスコは全社の営業利益の12%をあげるドル箱だった。

 4ブランドの日本での売上高は年間150億円。ヤマザキ・ナビスコ改めヤマザキビスケットの17年12月期は、ナビスコブランドがなくなった影響が初めて年間を通して及ぶため、注目された。売上高は前期比60億円減の327億円、営業利益は23億円減の1.6億円に落ち込んだ。“ナビスコショック”の影響は小さくなかった。

 そこでヤマザキビスケットは巻き返しに出た。モンデリーズの看板ブランド「リッツ」に対抗して、ヤマザキビスケットは「ルヴァン」を投入。テレビCMには、リッツから鞍替えした女優の沢口靖子を起用した。

 小売、通販、流通、メーカーのビジネスニュースを発信する「流通ニュース」が、『リッツ』VS『ルヴァン』、ブランドスイッチは起きたのか?」(18年6月19日付)と報じた。

 それによると「2016年9月の販売シェアではルヴァン34.4%、リッツ65.6%だった。11月にルヴァン57.9%、リッツ42.1%となりルヴァンがリッツを逆転。ルヴァンの勢いは、その後も続き、18年4月時点では、ルヴァン60%、リッツ40%となっている」という。

 連日、テレビで流れる沢口靖子の「ルヴァンパーティ」のCM効果が大きかったということかもしれない。

 ヤマザキビスケットの18年1~9月期決算の売上高は前年同期比3.8億円増の240億円、営業利益は同1.4億円減の3.6億円だった。まだヤマザキ・ナビスコ当時の水準には届かないが、浮上の手応えをつかんだようである。

 ブランドロスが発生した時、後継商品を何にするのか。その成否で企業の浮沈が決まる。
(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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