地方都市の人口減少は、もはや手が付けられないほど深刻化している。経済に大きな影を落とし、インフラの老朽化や社会保障システムの崩壊といった負の連鎖を次々と引き起こす。それだけに、高度経済成長期から時の政権は地方活性化にあれこれ知恵を絞ってきた。残念ながら、そうした地方活性化の政策は不発に終わっている。
そして、ついに地方の人口減少は都市部にも波及し始めた。1920年に初めて国勢調査が実施されて以降、5年ごとに調査がなされるたびに日本の総人口は増加していた。しかし、2015年の統計は史上初の人口減少を記録。2020年の統計は、さらなる減少が避けられない。
なぜ、人口増政策は成功しないのか。
その要因は、「都市部に人口が偏在してしまう国土政策にある」というのが、地方の首長・議員の共通見解だ。地方都市では基幹産業が乏しく、また大学が少ないために、18歳の若者は進学・就職で東京や大阪に流出してしまう。その一方、産業がないために、大学を卒業した後も就職で戻って来ることはない。
東京では待機児童や高い住居費といった問題から子供をたくさん産み育てることが難しい。東京や大阪といった大都市への集中が進めば進むほど、出生率は低下し、東京はブラックホールのように地方の活力を奪う。これが、日本全体の総人口が減少する構図だ。
こうした仕組みを根本的に改善するには、地方に産業を生み出さなければならない。バブル以前なら、農山村に大企業の巨大工場が進出し、地方で雇用を創出することもできた。そうしたことから、地方自治体は企業誘致に努力を傾注していた。
平成に入ると、大企業は安い人件費を求めて海外に工場を移転するようになる。最初は、日本から近い中国に白羽の矢が立つ。中国の人件費が高騰してきた2000年代後半からは、カンボジアやベトナムなどへの工場進出が増加していく。こうして企業が地方に工場を進出させて、その工場が地方都市の経済や雇用を支えるという時代も終わりを告げた。
地方が衰退すれば、日本全体が凋落する。第二次安倍政権が発足した2012年には、そうした兆候は顕在化していた。だから、安倍政権は地方創生の大号令を発した。
しかし、ある地方都市の県職員はこう落胆する。
「安倍政権の地方創生は、結局のところポーズだけです。地方都市の実態を知らない人が、票集めのために言っているだけにすぎません。結局、地方創生なんて言っても、有効な手立ては何ひとつ取れていないのですから。もはや産業の担い手となる若者が大量に東京・大阪へと流出してしまっているから、手の施しようがない」
摘果の回数が少ないオリーブ栽培
長らく地方都市を支えてきた産業といえば、農業が圧倒的なシェアを占める。そうした農業も、担い手は高齢者ばかりになった。農業が肉体労働である点を考慮すると、あと5年もしないうちに地方の農家は続々と廃業に追い込まれるだろう。そうなったら、地方都市には産業そのものが消滅する。