高級食パンブームのなか、輸入小麦を原料としている食パンから、2015年7月にWHO(世界保健機関)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)が「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と結論づけたグリホサートが検出された。検査を行った農民連食品分析センターが4月12日に公表した。それによると、国内に流通している食パンおよび菓子パン15製品を検査し、そのうち食パン9製品、菓子パン2製品からグリホサートを検出(痕跡を含む)したという。具体的に検出された製品は、以下のとおり。
・敷島製パン「麦のめぐみ全粒粉入り食パン」(グリホサート検出量0.15ppm)
・山崎製パン「ダブルソフト全粒粉」(同0.18ppm)
・パンリゾッタ東武池袋「全粒粉ドーム食パン」(同0.17ppm)
・株式会社マルジュー「健康志向全粒粉食パン」(同0.23ppm)
・山崎製パン「ヤマザキダブルソフト」(同0.10ppm)
・山崎製パン「ヤマザキ超芳醇」(同0.07ppm)
・敷島製パン「Pasco超熟」(同0.07ppm)
・フジパン「本仕込み」(同0.07ppm)
・神戸屋「朝からさっくり食パン」(同0.08ppm)
・フジパン「アンパンマンのミニスナック」(同0.05ppm)
・フジパン「アンパンマンのミニスナックバナナ」(同痕跡)
ちなみに国産小麦を原料としている食パンからは、グリホサートは検出されなかった。
このグリホサートは、米モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」に含まれる化学物質で、前述のように2015年7月にIARCが、非ホジキンリンパ腫との関連が認められ「ヒトに対しておそらく発がん性がある」(Group2A)と評価された。また、18年8月には米国カリフォルニア州裁判所が、ラウンドアップを使って非ホジキンリンパ腫になったとして2億9000万ドルの賠償をモンサント社に命ずる判決が下されている。
日本では残留農薬基準の大幅緩和
世界的にはIARCによる報告以降、以下のとおりグリホサートを排除する動向が強まっている。
・15年:ドイツの大手ホームセンターがグリホサートを含む製品の取り扱い中止
・同:スリランカがグリホサートの輸入を禁止
・同:コロンビアがグリホサートを主成分とする製品の散布禁止
・16年:EU委員会はグリホサートについて加盟国に規制強化を要求。イタリアは、公園や市街地、学校、医療施設周辺などでのグリホサートの使用禁止
・17年:スウェーデン、ベルギーなどがグリホサートの個人使用禁止
・同:米国カリフォルニア州がグリホサートを発がん性物質リストに登載の方針を発表
・18年:チェコが2019年からグリホサート使用を全面禁止
・19年:ベトナムがグリホサートを含む除草剤の輸入を禁止
・同:インドではパンジャブ州など4州に続きケララ州がグリホサートの販売を禁止
このような世界的な動きに逆行していると言えるのが日本の動向である。日本では、ホームセンターでグリホサートが含まれているラウンドアップが堂々と売られ、個人も含めて使用されている。
それだけではない。日本政府は昨年12月、農薬メーカーの求めに応じてグリホサートの残留農薬基準の大幅緩和を実施したのである。これにより残留農薬基準は、以下のとおり大幅に緩和された。
・小麦:5ppm→30ppm
・ライ麦:0.2ppm→30ppm
・トウモロコシ:1ppm→5ppm
・そば:0.2ppm→30ppm
・ごま種子0.2ppm→40ppm
これは、海外の農業生産における全面使用を前提とする残留農薬基準設定であるが、このような基準であれば、今後も輸入小麦を原料とする食パンにはグリホサートが残留することになる。消費者は、国産小麦を原料とする食パンを選ぶか、残留農薬基準の見直しを求めるかどちらかを選択しなければならない事態に直面している。
(文=小倉正行/フリーライター)