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“元・神童”山田ルイ53世に聞く「学歴とお笑い」【後編】

高学歴芸人は面白いのか?山田ルイ53世が語る「本来のお笑いが放つ暴力的な魅力」

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写真=岩澤高雄(The VOICE MANAGEMENT)

 東京大学、京都大学、慶應義塾大学、早稲田大学。名だたる名門大学を卒業した多くの「高学歴芸人」が活躍するお笑い界。芸人にとって学歴が高いことは有利なのか、学歴が高い芸人が増えているのはどうしてなのか──。

 今回、そんな「芸人と学歴」の謎について話を聞いたのは、「ルネッサ~ンス!」でお馴染みのお笑いコンビ・髭男爵の山田ルイ53世。一発屋芸人たちの裏側に迫ったルポ『一発屋芸人列伝』(新潮社)で、「第24回 編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞した山田には、知る人ぞ知るもうひとつの顔がある。関西の名門・六甲学院中学に入学しながら、そこで大きな“挫折”を経験しているのだ。

 一方で世は学歴ブームであり、その波はお笑い業界にも及んでいる――ように見える。“高学歴芸人”の名のもとにクイズ番組に出る芸人もいれば、芸人として大活躍しながら実は高学歴、という者も珍しくない。最近の若手だけに絞ってみても、にゃんこスター・アンゴラ村長(早稲田大学文学部)、メイプル超合金・カズレーザー(同志社大学商学部)、ひょっこりはん(早稲田大学人間科学部)、霜降り明星・粗品(同志社大学中退)等々枚挙にいとまがないほどだ。

 しかし、では「高学歴の芸人のほうが芸能界で成功しやすいのか?」、あるいはよりストレートに「高学歴のほうが芸人として“面白い”のか?」と問われれば、多くの人の脳裏には「?」のマークが浮かぶだろう。なぜなら、横山やすしから島田紳助、そしてダウンタウンの2人を挙げるまでもなく、芸人の魅力のひとつとして、不良っぽさ、社会からの逸脱性もまた重要な要素だと考えられるからだ――。

 【インタビュー前編】では、過酷な中学受験を乗り越えながら、いったんは大きな挫折を経験した芸人・山田ルイ53世に、自身と受験勉強、そして自身の学歴について話を聞いてきた。そこで今回の【後編】では、いったい芸人にとって学歴とは、あるいは芸人にとって学歴社会における“頭のよさ”とはなんなのか、どのような意味を持つのか――について話を聞いた。

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山田ルイ53世(やまだるい・53せい)
1975年、兵庫県生まれ。お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。私立の中高一貫校・六甲学院中学に進学するも、中学2年で不登校に。大検を取得後の1995年に愛媛大学法文学部に進学するも、お笑い芸人になるべく同大を中退して上京、1997年に吉本興業のお笑い養成所、NSC東京校に入学。1999年、お笑いトリオ「髭男爵」を結成するも、翌年にはひぐち君(樋口真一郎)とのコンビに。2008年に「ルネッサーンス」のギャグで大ブレイク。2015年、『ヒキコモリ漂流記』(マガジンハウス)を刊行、2018年には『一発屋芸人列伝』(新潮社)がベストセラーとなり、文筆家として大いに注目を集めている。【写真=岩澤高雄(The VOICE MANAGEMENT)】

勉強してきた人間は、ネタの構造をトレースすることは得意?

 高学歴芸人も当たり前となっている昨今。クイズ番組では、多くの高学歴芸人が活躍している。兵庫の名門校・六甲学院の出身である山田ルイ53世もまた、クイズ番組に出演する機会は少なくなかった。

「学力があるなら、クイズ番組や情報系の番組に呼ばれやすいというのはあるでしょうね。たとえば僕も、『Qさま!!』(テレビ朝日系)とかは、ブレークした2008年以降も何度か呼んでいただいた記憶があります。ただ、僕のように中学は名門校だけど、途中で引きこもりになって、さらに大学は辞めている――と経歴がグチャッとしていると、すんなり『高学歴芸人』とはいいづらい。実際、高学歴といわれると自分でも違和感がありますしね。学力とか物知りといった点ではなく、学歴や学校名という部分で、ちょっとブレてしまうというか。

 クイズ番組でも、結局は東大、京大みたいなわかりやすい肩書きがあるほうが扱いやすい、そういった有名な大学の出身であるほうが、“通りが良い”というのはあると思います。中学受験で結果を出したというのは、、テレビ的にはわかりづらいということだと思います」

 学歴や学力が、クイズ番組での活躍やその出演に際して有利に働くというのは、まあ理解できる。では、芸人の“本分”たるネタ作りでは、どうなのだろうか?

「今はYouTubeなんかで手軽にいろんな芸人さんのネタを見ることができるから、ある程度学力があって情報処理能力が高ければ、お笑いのネタの構造を理解しやすいとは思います。受験勉強をして、それなりに結果を出した高学歴の人であれば、ネタ作りができるようになるのは早いでしょうね」

 オーソドックスなネタ、“キャラ芸人”的なネタ、シュールなネタなど、構造的にさまざまなタイプのネタがあるが、いずれも、研究によってある程度は“仕上げる”ことが可能だという。

「たとえば、僕たち髭男爵の『貴族漫才』は、ツッコミを乾杯に置き換えるというところがミソ。台本を作る時も、最終的に「○○か~い!」とツッコむまでのふたりのやり取りの回数や尺、そのテンポ感とか、乾杯の音が鳴る余韻の長さとか、けっこう緻密に考えてますね。そういう視点で僕たちのネタを眺めれば、いわゆる“キャラ芸人”のシステムはわかるはず。だから、僕たちみたいなのが出てきて以降は、コンビで設定を背負っているキャラ芸人も増えていますよね。

 一方で、シュールなネタだって、研究すればそれなりのものはできる。というわけでいろんなパターンのネタがありますが、それなりに頭が良ければ、ネタの構造を理解すること自体は容易だと思います。そして、その構造を自分のネタにトレースすれば、比較的簡単にネタを作ることもできる。ただ、そのことと、オリジナリティーがあるかどうか、そこに発明があるかというのはまったく別の話。過去のシステムを踏襲して似たネタを作ることと、独創的な“異端なネタ”を作ることとは、もう、まったくの別モノだと思いますね。ツッコミを『○○か~い!』と乾杯に置き換えるというバカバカしさは、本来理屈じゃなく感覚、閃きの部分。さらにそれを漫才としてやるというのは、当時のお笑い界の空気感でいえば、普通は実行できない。理屈では到達できないんです。手前味噌ですが(笑)」

 受験を乗り越えられるくらいの学力があれば、それなりのネタを作ることはできる。つまり、学歴があれば芸人としてのスタートラインに立ちやすいということはいえるのだろう。しかし、そこから独創的なネタを作り、そして売れていけるかどうかは、また別の話だということだ。

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