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山崎将志「AIとノー残業時代の働き方」

今の社会は「M&A」と「株式会社」のおかげで回っている…その誕生秘話と超基礎知識

文=山崎将志/ビジネスコンサルタント
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「Getty Images」より

 

 会社を買うことは一般に「買収」と呼ばれます。買収という言葉を辞書で調べるとまず、買い取ること、買い占めることという意味が出てきます。「土地を買収する」といった使い方です。もうひとつに、「有権者を買収する」などのように、ひそかに利益を与えて味方にすること、という意味が出てきます。どうも、買収という言葉は好ましい行為を表す言葉として使われていないようです。

 言葉が先にあったのか、行為そのものが好ましくないからなのかは定かではありませんが、会社の買収には、あまりポジティブな印象を持たれないようです。

 それを嫌ってかM&Aと呼ぶ人も増えています。MAとはMerger and Acquisitionという英語の頭文字をとったものです。Mergerとは合併という意味です。英語にはmergeという動詞があり、合わさる、一緒になるという意味です。英語圏の国に行くと、道路が合流する場所にmergeと書かれた看板があります。またIT業界ではカタカナ語として使う人もいて、2つのファイルを1つにすることを「ファイルをマージする」と言ったりします。Mergerはこのmergeの派生語です。Acquisitionとは獲得、入手、取得という意味です。今お話ししている文脈では買収という意味です。

 言葉は不思議なもので、MAと聞くとカッコイイ、今の世の中に必要な取り組みだと考える人がいます。「コーポレートMA研究」というゼミがあれば優秀な学生が殺到しそうですが、「会社買収と合併学」という名前だとなかなか人が集まらない気もします。

 会社買収に否定的な印象を持つ人たちのなかには、会社を買う人たちのことを「乗っ取る」と表現する人もいます。創業者の強い想いから会社が生まれ、たくさんの社員が育ててきた会社をお金で買おうというのはけしからん。家族を支える社員を切ってコストを下げ、おいしいところだけ持っていくのは道徳的に問題がある。彼らは人の心を理解できないただの強欲な連中だ……。

 そのような印象を嫌ってか、合併という言葉を使う人もいます。しかし、その中身を見てみると、実は強いものが弱いものを飲み込むかたちでの買収であることがほとんどです。私の同級生のなかには新卒で銀行に就職した仲間がたくさんいますが、最初に入った銀行に新卒から25年たった今でも勤め続けている人は数えるほどしかいません。ほとんどは、自分が勤める銀行が買収されて、しばらくして退職しています。話を聞くと、ほとんどの銀行で組織の長が買収したほうの会社から送り込まれるのを見て、居心地が悪くなり、自分にはもうこの組織では出世の道が閉ざされたと、意を決して新天地を求めて行くのだそうです。ですから、表向きの手法は「合併」と謳っていても、実態は「買収」であることがほとんどです。

山崎将志/ビジネスコンサルタント

山崎将志/ビジネスコンサルタント

ビジネスコンサルタント。1971年愛知県生まれ。1994年東京大学経済学部経営学科卒業。同年アクセンチュア入社。2003年独立。コンサルティング事業と並行して、数社のベンチャー事業開発・運営に携わる。主な著書に『残念な人の思考法』『残念な人の仕事の習慣』『社長のテスト』などがあり、累計発行部数は100万部を超える。

2016年よりNHKラジオ第2『ラジオ仕事学のすすめ』講師を務める。


最新刊は『儲かる仕組みの思考法』(日本実業出版社)

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