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東京で急拡大した自転車シェアリング、突然ブーム終焉の事情…重大事故&自転車放置が多発

文=小川裕夫/フリーランスライター
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訪日外国人観光客の増加もシェア拡大に寄与

 ドコモが手がけていたからこそ急拡大したという背景もある。11年以降、スマホユーザーは爆発的に増加し、ネットのメインユーザーはパソコンからスマホへと切り替わった。主に自宅や職場でしか使えなかったネットが外出先でも簡単に使えるようになり、そうした通信機器の使い方の変化も自転車シェアの利用スタイルを大きく変えた。

 ドコモが位置情報を活用し、配車を効率化したこともポート拡大に寄与している。ドコモの自転車シェアリングは、借りたポートにそのまま返却する必要がない。ドコモのポートなら、どこでも自由に返却することが可能だ。これは利用者には便利なシステムだが、事業者にとっては自転車の回送という追加の仕事が発生するため、非効率的にならざるを得ない。

 しかし、位置情報を導入したことにより、回送作業が効率化。自転車を余分に用意する必要もなくなり、少ない自転車台数でポートを切り盛りできるシステム構築が進んだ。そして、それは稼働率の向上にもつながった。

 さらに、拡大を後押ししたのが、訪日外国人観光客の存在だ。東京都心部は観光名所が点在しており、外国人観光客が頻繁に自転車シェアリングを利用するようになり、都心部のポートはさらに増えていった。これによってシェア自転車の利用者が増加するという好循環を生んだ。

ブームにブレーキ

 しかし、18年あたりから過度な急拡大のひずみも見られるようになった。手軽に利用できるシェア自転車だけに、乗り捨てなどが相次ぐようになり、道路上に放置される自転車が目立つようになった。

 さらに自転車事故の多発もブームにブレーキをかけた。近年、小中学生による自転車の重大事故が目立つようになっている。なかには歩行者が死亡する事故まで起きており、賠償額1億円に迫るケースも出てきた。13年には愛媛県が自転車保険の加入を義務化する条例を制定。そのほかにも自転車保険の加入義務化を打ち出す自治体も出てきているが、東京都の職員はこう話す。

「舛添都政下では、“環境に優しい”“渋滞緩和”といった観点から、自転車道の整備を積極的に進めました。そして、自転車シェアリングも積極的に奨励していました。現在でも自転車政策は大きな課題のひとつですが、当時ほどの熱は感じません。自転車シェアリングが急拡大したことで、放置自転車や事故といったマイナス面も大きくクローズアップされるようになったからです。現在は各自治体とも連携して、交通安全やマナー教育、放置自転車対策、駐輪場整備に力を注いでいます」

 推進の旗を振ってきた地方自治体が一定の距離を置き始めたことで、自転車シェアリングは一気に熱を失い始めた。先駆けでもあるドコモは、以前から利用者を対象にした交通安全教室を開催するなどしていたために、ブームが一段落しても孤軍奮闘している。しかし、ブームに乗じて安易に参入した事業者は事故に対しての責任所在や補償の観点から、撤退を始めている。

(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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