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黒い赤ちゃんも…最悪の食品公害「カネミ油症」50年、カネカは被害者救済を一切拒否

文=明石昇二郎/ルポライター
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 現在の日本には、1994年に制定された製造物責任法(PL法)がある。しかし同法では、製造物に欠陥があることを当時の知見で認識できなかった場合は「賠償の責めに任じない」としており、カネカはPCB廃棄物の無害化処理事業の費用負担を免れている(カネカ社内で保管されてきたPCB廃棄物の処理費のみを負担)。カネミ油症事件にしても、PL法がなかった時代に起きた食品公害事件であるため、カネカはPCB製造者としての責任を免れており、これを盾にカネミ油症被害者の救済策にも加わっていない。

 そんなカネカとは対照的に、「カネミライスオイル」を製造販売したカネミ倉庫は、同事件発覚から50年後の現在に至るまで、被害者として認定された油症患者の医療費を負担している。ただ、化学大手メーカーのカネカと違い、カネミ倉庫は中小企業のため、被害者からの医療費請求を値切り、被害者からたびたび批判を浴びている。国はカネミ倉庫に政府米を優先的に預けることで、カネミ倉庫が支払う医療費を間接的に支えているが、カネミ倉庫は財務諸表を公表していないため、税金の投入でかえって“焼け太り”している可能性もある。

 国が被害者救済や、PCBとダイオキシンによる油症の治療法開発を理由に、医療費を免除、あるいは補填すれば、カネの流れも明朗になる上に無駄もなくなるのだが、食中毒事件は「民間対民間」の問題であることが壁となり、実現していない。

「道義的責任」が問われるカネカ

 50年経ってもいまだ問題山積のカネミ油症。カネミ油症被害者たちは今、PL法やPCB廃棄物特別措置法を逆手に取り、まるで他人事のように振る舞い続けるPCB製造者のカネカに対し、油症被害者の救済事業に協力するよう求めている。カネカに法的責任はないとしても、やっかいな毒物のPCBをこの世に生み出してしまった道義的責任はあるだろう――との考えからだ。

 昨年(2018年)10月、カネミ油症は事件の発覚から50年の節目を迎えた。被害者たちは2年前からカネカのおひざ元である高砂市で、同市の市民らとともに被害者集会を開催。今年10月27日には、3回目となる被害者集会が同市内の「ユーアイ帆っとセンター」で開かれる。ゲストは、カネミ油症被害者救済に尽力した政治家で元・厚生労働大臣の坂口力さん。被害者救済の輪にカネカが加わるまで、高砂集会は今後も毎秋、開催されるようだ。

 それにしても不思議でならないのは、なぜPCBを製造したカネカが、PCBを無害化する責任を逃れ、まんまと国に押し付けることに成功したのか――ということだ。

 1972年の使用中止後、使わずに保管されてきたPCB入り製品は、全国各地にある専用施設で「PCB廃棄物」として無害化処理をされている。その際、PCB入り製品の所有者(購入者)は、規定の処理代金を支払っている。誰がこんなスキーム(枠組み)を編み出したのか。

 カネカは、今の世に続く環境汚染を引き起こし、かつてのお得意様であるPCB入り製品の所有者に無害化処理費用を負担させるなど、世間に多大な迷惑をかけている一方で、毒物PCBを製造してしまった責任について公に謝罪したことがない。前述のとおり、無害化処理事業に出捐金を出すこともない。

 ところでカネカは今春、育児休暇を機に退社を余儀なくされた男性社員に対する社の対応が「パタニティ(父性)ハラスメント」であり「ブラック企業」だとインターネット上で批判されて炎上。世間の注目を一身に浴びていた。「問題であるとは認識しておりません」と、社の対応を正当化したことでさらに物議を醸し、株価の下落まで招いている。

ガクで

ガイを

ナエル会社――。

 これは、株式会社カネカのキャッチフレーズである。

 そこで提案なのだが、カネミ油症の根治療法やPCBの無害化という切なるネガイを、カガクでカナエてみてはいかがだろう。「パタハラ」「ブラック」と言われて傷ついた会社の評判も、間違いなく挽回できると思う。

(文=明石昇二郎/ルポライター)

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