
初回1万9800円からの低価格でオーダースーツを提供する、株式会社オーダースーツSADA。同社の経営戦略はアパレルとしては異色だ。たとえば、出店先が「オフィスビルの空中階(2階以上の店舗)」だったりする。百貨店やショッピングモールならともかく、普通の会社が入っているようなそっけないオフィスビルの、さらに路面店でなく空中階となると、目立たないし入りづらい。
なぜ、そんな出店戦略を採っているのか。男性向けスーツ本『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。』(CCCメディアハウス)の著者が、オーダースーツSADAの佐田展隆代表取締役社長に聞いてみた。
業界の常識を覆す“逆張り”戦略
――SADAさんの店舗は、オフィスビルの空中階など目立たない場所の立地も多いですよね。なぜなのでしょうか。
佐田展隆氏(以下、佐田) 販管費(販売管理費)を抑えるためです。ほかのテーラーさんを見ると、銀座などの一等地に、それなりの広さの路面店で、内装にもすごくお金をかけていますよね。
――重厚感ある色調の内装で“テーラー”という高級さを感じさせるような……。
佐田 そして、そのような店舗に、稼働率が高いわけでもないのに常に多くの店員がいます。お客さんでごった返しているテーラーは、なかなか見たことがないですよね。これがテーラー業界の通常のやり方です。
ただ、このやり方はすごく販管費がかかるんです。家賃、内装、人件費ですね。販管費が高くなってしまうと、スーツの売値を上げないと採算が取れないビジネスモデルになってしまいますし、現にそうなっているテーラーさんが多いです。当社では、売値を抑えてスーツを提供するために、あえて空中階の店舗を多く選んでいます。
――空中階になると、どのくらい家賃が変わるのでしょうか?
佐田 一等地であればあるほど、空中階になるほど坪単価は下がります。1階に比べ、上階の家賃は3分の1ぐらいになったりすることもあります。
――空中階でも、一等地には出店されるんですね。
佐田 そうですね。というのも、当社はホームページを見て、あるいは紹介されて来店されるお客様が多いんです。そのため「近くまで来たんだけど、どこにあるんだろう?」というほど、わけのわからない立地だとまずいんです。一等地で「あの商業施設の隣」というふうに説明できるような場所を選んでいます。
――お店の内装も、テーラーというよりオフィスビルのような雰囲気ですよね。
佐田 当社は内装において、明るさと清潔さ以外にはお金をかける必要はないと思っています。一方、一般的なテーラーさんは「同じものをできるだけ高く売ろう」という方針なんですよね。そのため、高級感や格式を打ち出して「高そうに見える店」「高いけどしょうがないよね」と思わせる店づくりをしたがるんです。でも、それは売る側の自己満足とも言えますよね。
当社は真逆で、「敷居を下げる」「この店なら高くないだろうな、と思ってもらえる」雰囲気を出すよう努めています。オフィス仕様の部屋を借りて、あとは社員たちで内装を手がけたりもしますよ。
『できる男になりたいなら、鏡を見ることから始めなさい。 会話術を磨く前に知っておきたい、ビジネスマンのスーツ術』 「使えそうにないな」という烙印をおされるのも、「なんだかできそうな奴だ」と好印象を与えられるのも、すべてはスーツ次第!
