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レナウン、再び経営危機、継続企業の前提に注記…香港の兄弟企業が代金を払ってくれない

文=編集部
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レナウンの公式通販サイト「R-online “The Shop”」より

 中国・武漢で発生した新型コロナウイルスの感染拡大で、ファッションビジネスは先行きの見えない状況に陥っている。日本のアパレル企業は中国で約7割を生産している。中国の衛星工場では従業員が十分に集まらなくなったりしている。その上、船便などで商品の輸送が滞っており、納期遅れが発生している。

「ダーバン」などを展開するレナウンは、上海の北に位置する南通市に主力の協力工場があるが、2月10日の工場の再開を延期した。

資金回収が滞り67億円の赤字

「米中摩擦の影響で資金が回収できなかった」

 アパレルの名門・レナウンの神保佳幸社長は3月2日、東京都内で開いた記者会見で、2月末に発表した19年12月決算で2期連続して赤字になった理由を、こう説明した。2019年12月期の連結決算(10カ月の変則決算)は最終損益が67億円の赤字だった。決算期変更で単純比較はできないが、赤字は2期連続で、19年2月期(39億円の赤字)に比べて赤字幅が大きくなった。

 売上高は502億円(19年2月期636億円)、営業損益は79億円の赤字(同25億円赤字)を計上。決算短信に「継続企業の前提に関する注記」(GC)がついた。赤字の元凶は取引先の香港企業に対する売掛金の回収が滞り、貸倒引当金53億円を計上したことだ。

 レナウンの親会社は中国繊維大手の山東如意科技集団である。売掛金の回収ができなかった香港企業は山東如意の子会社、恒成国際発展有限公司。レナウンとは兄弟会社になる。レナウンは世界から調達した綿や糸を恒成国際に販売。恒成国際は中国のアパレル・卸企業に、それを売っている。ところが、「米中貿易摩擦の影響によって資金回収が滞る」(神保社長)事態となった。

 恒成国際から売掛金を受け取れない時は、山東如意が代わってレナウンに払う取り決めになっていたが、親会社の資金繰りも火の車。山東如意は19年末の社債の償還を優先させた。社債を償還ができなければ債務不履行(デフォルト)となる。デフォルトになれば、取引金融機関が資金を引き揚げることになるから、デフォルトは事実上の「死刑宣告」だ。山東如意は、子会社のレナウンへの支払いより、社債の償還を優先せざるを得なくなった。

 山東如意は英ブランド「アクアスキュータム」やスイスの「バリー」、米スパンデックス繊維の「ライクラ」など大型のM&Aを次々と仕掛けた結果、債務の返済に窮してしまったのだ。神保社長は「対外投資が多額になり、資金の工面がつかなくなっていたのではないか」とみている。

「払ってくれるという意思はもらっているが、時期がはっきりしない」(神保社長)。救世主転じて赤字の元凶になった。

 米中貿易戦争は依然として続いているうえに、新型コロナウイルスの感染拡大で、中国でのビジネスは停滞している。山東如意の経営はどうなるのか。先行きは不透明だ。レナウンが売掛金を回収できる保証はない。

中国企業の傘下に入り10年目の蹉跌

 レナウンの創業は1902年。レナウンの歴史は日本のファッション産業の歴史そのものだ。

 1960年代、「イエイエ」で知られるレナウン娘のテレビCMが一世を風靡した。69年に発売した「アーノルドパーマー」は、爆発的なワンポイントブームを巻き起こし、レナウンのブランド力を不動のものにした。日本株式会社が高度成長をひた走っていた時期が、レナウンの黄金時代でもあった。

 そして、バブル崩壊後、暗くて長い不況のトンネルに迷い込んだ。2004年、紳士アパレル大手のダーバンと経営統合した。10年には山東如意が第三者割当増資を引き受け、筆頭株主に躍り出た。レナウンはこうして山東如意グループ入りしたわけだ。山東如意グループが現在もレナウンの53%の株式を保有(18年9月末時点)する筆頭株主だ。山東如意は1972年創業で生地から縫製まで手掛けるメーカーで、もともとは小売り業者ではない。

 レナウンは2011年に中国に合弁会社を設立。レナウンのカジュアルブランドを扱う店舗を10年間に最大1000店舗出す計画を立てていたが、実際には100店舗にも届かず14年に撤退した。「小売りの経験がない山東如意と、中国の商習慣に不慣れなレナウンとでは、店舗のオペレーションがうまくいく道理はなかった」と指摘するアナリストもいる。

 レナウンは山東如意グループの傘下入り後、40以上あったブランドを半分以下にするなど不採算事業の整理を進めた。「ダーバン」「アクアスキュータム」を主力ブランドとして営業に注力したが、主な販路である百貨店向けが低調で、厳しい経営が続いていた。加えて、多額な売掛金の回収が滞った。株価は3月13日の金曜日に、日経平均株価の暴落で上場来安値の60円をつけた。3月17日には59円まで下げ安値を更新。3月26日の終値は74円だった。

 2010年に山東如意のグループに入って今年で10年。レナウンは大きな曲がり角に差しかかっている。

(文=編集部)

【続報】

 レナウンが3月26日に開催した定時株主総会で、神保社長と北畑稔会長の取締役再任の議案について、株式の過半を持つ筆頭株主の中国・山東如意科技集団が反対し、否決された。両氏は取締役の職を解かれた。社外を含めた取締役10人のうち、両氏を除いた8人は再任された。総会後の取締役会で毛利憲司取締役兼上席執行役員が社長に昇格した。神保社長は相談役に退く。

 売掛金の回収を巡って、レナウンと山東如意が対立していたのが、大株主の山東如意科技集団が社長、会長の続投を否決した理由だ。過半の株式を保有する山東如意が、伝家の宝刀を抜いて、盾突くレナウンの両首脳の首を切った、というのが真相だ。

 名門レナウンといえども、中国資本に呑み込まれた以上、彼等の言いなりになるしかないということだ。山東如意は3月半ば、「経営陣の体制を見直したほうがよいのではないか」と、社長・会長の再任を拒否することを伝えていた。

 レナウンは3月27日、親会社である山東如意の邱亜夫董事長が26日付で会長に就任したと発表した。国内市場を毛利・新社長、海外事業を邱亜夫会長が担当する。

 27日の記者会見で毛利・新社長は「会長職に邱亜夫董事長が就任し、山東如意と一心同体となった。日中が合体して事業を進めていく」と述べた。「山東如意は1月から各事業体の若返りを進めており、レナウンも今、若返りが必要だと言われた」(毛利氏)。

BusinessJournal編集部

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