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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

【新型コロナ緊急対策】現金給付、世帯別「現金給付」の諸問題…不公平性や賃金操作の可能性

文=小黒一正/法政大学教授
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内閣府のHPより

売上蒸発の簡易試算

 今回の新型コロナウイルスの感染拡大が日本経済に及ぼす影響を把握するためには、大規模イベントや不要不急の外出等に関する自粛要請の影響も整理する必要がある。

 まず、自粛要請で真っ先に打撃を受けているのが、飲食やホテル・観光などの産業である。外食や旅館・ホテル等からお客が遠のき、一種の「売上蒸発」が起こっている。例えば、政府主催の第4回「新型コロナウイルス感染症の実体経済への影響に関する集中ヒアリング」(3月23日)において、定期航空協会は当面4カ月で約4000億円以上(年間で約1兆円)の減収や、日本旅行業協会は売上高(主要旅行業者総取扱額)が3月で3274億円の減収、4月で2931億円の減収となる予測を示している(注:定期航空協会は政府に約2兆円の支援策として融資への政府保証を要望中)。また、日本百貨店協会によると、2月の全国百貨店売上高は前年同月比マイナス12.2%の3661億円と公表しており、これは約500億円の減収を意味する。

 では、日本全体の売上蒸発はどの程度のものか。一つの参考になるのが、経済産業省が公表する「経済センサス・活動調査」である。この調査は企業活動の国勢調査と位置づける統計で、2013年1月下旬から公表している。直近(2018年6月)の確報によると、2015年における全産業の売上高は約1625兆円である。2015年の名目GDPは約531兆円なので、全産業の売上高はGDPの約3倍であり、全産業における1日当たりの売上高は平均で約4.5兆円である。

 また、全産業の売上高(約1625兆円)のうち、旅館・ホテル等の宿泊業・飲食サービス業は約25兆円、映画館や劇場等の生活関連サービス業・娯楽業は約46兆円、デパート等の卸売業・小売業は約501兆円となっている。これら産業の売上高が全産業の売上高に占める割合は約35%であり、これら産業における1日当たりの売上高は平均で約1.6兆円である。

 新聞報道では、デパートの3月における売上が前年同月比で30-40%減との予想も多いが、東京商工リサーチの第3回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査によると、前年同月における3月の売上を100とするとき、6901社のうち約8割の企業が前年割れで、売上の中央値は全企業が85、中小企業が85、大企業が92である。4月の売上減がさらに加速する可能性があり、仮にこれら産業の売上がコロナウイルスの影響により前年同日比で1日15%減少と予測するとき、どうなるか。

 これら産業だけで1日平均の売上蒸発は約0.24兆円であり、1か月で7.2兆円になる可能性がある。この試算は前提に依存する大雑把なものだが、自粛が長期化し、3か月継続すると21.6兆円の売上蒸発になる。6か月継続ならば43.2兆円(名目GDPの約8%)になる。

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