NEW
木下隆之「クルマ激辛定食」

キャデラック「エスカレード」、想像を絶する圧倒的な威圧感!運転手の気持ちすら大きくする

文=木下隆之/レーシングドライバー
キャデラック「エスカレード」、想像を絶する圧倒的な威圧感!運転手の気持ちすら大きくするの画像1
キャデラック「エスカレード」

 とにかく巨大である。狭い日本の道を走るには、そのサイズを持て余してしまう。慣れるまでは、車線内に納めながら走らせるのにも気を使う。米ゼネラルモーターズ(GM)の高級車ブランド・キャデラックの「エスカレード」は、それほど巨大なSUV(スポーツ用多目的車)なのだ。

 全長は5195mm、全幅は2065mm、全高は1910mmと、堂々とした体躯だ。四角い型にはめて成形したかのようにスクエアなフォルムは、宮殿を前に仰ぎ見たかのような威圧感がある。全長は想像通りだったが、幅がとにかく広い。運転席に着座してみると、助手席の人員が遠く見える。2人の間には太いコンソールがあり、そこにはクーラーボックスサイズの収納庫がある。そう思って確認したら、そこは確かに冷蔵庫だった。

 高さも極め付きである。1910mmもあるから、見上げる感覚である。乗り込みも特殊だ。ドアを開けると足元にステップが自動で迫り出してくる。そのステップを階段がわりに足を乗せ、右手で掴んだフックを引き寄せるようにする。コクピットによじ登る要領である。思わず「ヨイショ」と口をついて出そうになった。

 視線の高さも想像のとおりだ。視点が驚くほど高いから、前走する乗用車のルーフを越えて、はるか前方まで見通せる。信号待ちで路線バスと並んだら、その運転手と同じ高さで目線が交錯してしまって照れくさかった。それほどの高さである。

キャデラック「エスカレード」、想像を絶する圧倒的な威圧感!運転手の気持ちすら大きくするの画像2

 だが、その大きさに閉口していたのも束の間、慣れれば取り回しもこなせるようになるから不思議だ。料金所や100円パーキングでは、物理的なサイズの問題があり、気を使う。だが、スクエアなボディは車両感覚を掴みやすい。しかも、前輪の切角が大きいから、思いのほか狭い道でも苦労はない。

 乗り心地は粗い。プラットフォームがトラックベースだから、前後左右にグラグラと揺れながら走る。観光地で象の背中に揺られたことを思い出した。のしのしと大地を踏み締める感覚なのである。ただしそれも、最新の快適SUVと比較した上での話だ。マグネチックライドと呼ばれる電子制御サスが組み込まれており、285/45R22という超大径のタイヤがドタバタするだけで、無骨なオフロードSUVと考えれば、優しくもある。アメリカでは街中を走るエスカレードを頻繁に見かけるし、ハリウッドスターがレッドカーペットに横づけするシーンも目にしたことがある。道なき道を突き進むためのオフロードモデルではなく、むしろ都会的なシーンが似合うアーバンSUVの風格が備わっている。

 搭載するエンジンはもちろん、V型8気筒のOHVである。排気量は6.2リッターに達する。最大出力は426ps、最大トルクは623Nmにも及ぶ。その粘り強い推進力で2.7トンのボディをひっぱるのである。加速スタイルも強引で、まさに象が駆け足したかのようだ。絶対的には速いのだが、俊敏ではない。

キャデラック「エスカレード」、想像を絶する圧倒的な威圧感!運転手の気持ちすら大きくするの画像3

 コラムシフトのレバーの先には、トーイング用モードが選択できるようになっており、クルーザーやモーターホームの牽引は得意である。その点では、都会を離れて緑深いキャンプサイトに出かけることも容易である。

 このように、守備範囲の広さもエスカレードの特徴なのだが、最新のモデルらしく環境にも優しい。動弁機構は古典的なOHVでありながら筒内直噴であり、バルブタイミングは可変だ。気筒休止もやってのける。高速道路と市街地が約50%ずつのおよそ200kmの行程で、オンボードコンピューター上の燃費計は7.6km/lだった。

 エスカレードに乗っていると、巷の小さないざこざが無意味に思えてくる。エスカレードのそのゆったりした乗り味は、ドライバーの気持ちをも大陸的にしてくれるのである。これはまさに、大きさを楽しむためのクルマなのだ。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ